現場作業員に熱中症リスクを見える化 ウェザーニューズのIoTセンサーに“暑さ指数”を追加:安全衛生
ウェザーニューズが提供する高性能気象IoTセンサー「ソラテナPro」に、暑さ指数(熱中症リスク)を算出する機能が加わった。通知も、アプリのプッシュ通知だけでなく、メール通知も追加し、回転灯などとの連携で、現場作業員に熱中症などの危険性を促せる。
ウェザーニューズは、高性能気象IoTセンサー「ソラテナPro」で熱中症の危険度を判定する「暑さ指数(熱中症リスク)」の提供を開始したと2024年3月14日に発表した。アラートにメール通知の機能も追加し、建設現場に設置する回転灯などとの連携も可能になった。
熱中症などの気象リスクを見える化、現場作業員に回転灯などで通知
ソラテナProは、気温/湿度/雨量/風速など7つの気象要素を1分ごとに観測する気象観測機。小型軽量のため設置が容易で、電源を入れるだけで観測を開始する。オムロンのセンシング技術によって、災害レベルの大雨(雨量毎時50ミリ)や強風(風速毎秒50メートル)も観測する高い性能に加え、3700万ダウンロードの天気アプリ「ウェザーニュース」やPC版の専用Webサイトから観測データだけでなく、天気予報や雨雲レーダーまで確認可能なため、利便性にも優れる。
記録的な暑さとなった2023年は、熱中症搬送者数が9万人を超えた。うち10%は、道路工事などの仕事場で発生し、過去5年間で最多となった。2024年夏も平年より気温が高く危険な暑さが予想されるため、ウェザーニューズは建設現場の観測データをトリガーにした迅速な熱中症対策を実現するべく、ソラテナProで“暑さ指数(熱中症リスク)”の提供を開始した。
熱中症リスクは、日向/日陰や風などの環境によっても変わるため、現場の気象条件に合わせて適切な対策を取れるようにした。具体的には、ソラテナPro」1分毎に観測された気温、湿度、風速などをもとに、環境省の熱中症予防情報サイトに示されている屋外でのWBGTの計算式を用いて算出し、“注意”、“警戒”、“厳重警戒”、“危険”の4ランクで判定する。現場の熱中症リスクを見える化することで、利用者はデータに基づいて迅速かつ適切な対策を取ることが可能になる。
今回、ソラテナProのアラート機能もバージョンアップし、これまでのアプリのプッシュ通知に加えて、メール通知も加わった。観測した気温/雨量/風速/寒さ指数(低体温症リスク)/暑さ指数(熱中症リスク)の各種データがカスタマイズした条件を満たした際に、プッシュ通知とメール通知で気象変化を知らせる。
そのため、建設現場からのニーズが高い回転灯(表示灯)など、各種メール通知をトリガーにしたシステムや機器との連携が可能になる。回転灯などの機器連携やメール通知、アプリのプッシュ通知の3つから、最適な方法で注意喚起することで、屋外作業中でスマホを触れない状況でも、事務所でPC作業中でも、見逃しがなく、全員が同じリスクレベルを共有できる。熱中症などの気象リスクを見える化することで、建設現場や工場で作業する従業員の他、動物園やテーマパークなど屋外施設の来場者、学校の児童生徒などの安全対策にも役立つ。
ソラテナProの利用方法は、レンタルと購入の2種類から選べる。PC版専用のWebサイトでは、1分毎や日毎の過去データをダウンロードして当時の気象と被害状況の分析も可能だ。1分毎の観測データは、クラウドに自動保存されるため、データ自体をクラウド経由のAPI連携などで、自社のシステムに組み込める。
総務省によると、2023年5〜9月の熱中症による救急搬送数は9万1467人だった。厳しい暑さが長期間にわたって続いたことで、平成20(2008)年の調査開始以降で2番目に多くなり、2022年より約2万人増加した。また、仕事場(道路工事現場、工場、作業所など)の熱中症搬送数は9324人で全体の10%を占め、過去5年で最も人数が多くなった(※総務省「令和5(2023)年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」)。そのため、ウェザーニューズでは、今夏の気温も全国的に平年より高い予想のため、適切な暑さ対策が必要と指摘している。
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