AIで6.9万件の災害事例を解析し、類似作業の事例を可視化するシステムを鹿島らが開発:防災
鹿島建設は、UNAIITと共同で、AIで6万9000件の災害事例を解析し、類似作業のケースを見える化するシステム「鹿島セーフナビ(K-SAFE)」を開発して、特許と商標の出願中だ。今後は、鹿島建設が、作業関係者との調整会議で使用する会議システムに鹿島セーフナビを導入し、使用している他のシステムと連携することで活用の幅を広げ、安全管理のさらなる向上に取り組んでいく。また、鹿島セーフナビに組み込んだデータ解析手法は汎用性があるため、建設業以外の産業における災害事例の解析にも適用できると見込んでいる。
鹿島建設は、UNAIITと共同で、鹿島が保有する約5000件の災害事例と、厚生労働省が運営する「職場のあんぜんサイト」に掲載されている約6万4000件の災害事例を対象に、AIを用いて解析し、類似作業のケースを見える化するシステム「鹿島セーフナビ(K-SAFE)」を開発したことを2021年10月14日に発表した。
災害事例の詳細を一覧表示することやCSV出力に対応
建設現場では、作業前に必ず、作業担当者の経験、知識、感覚を基に、起こり得る災害を予測し対策を立案する「危険予知活動」を行う。危険予知活動では、作業担当者が該当作業に関連する過去の災害事例を数多く参照できれば、危険予知の精度向上につながることが期待されるが、膨大な事例の中から該当事例を自ら選定することは多くの手間と時間がかかる。
さらに、災害事例に記載された作業内容、災害原因、災害状況は「自然言語(自由に記述された文章)」のため、どのような作業においてどのような原因で災害が起こったのかという「災害傾向」の把握には、全ての災害事例を読み解く必要があり、日々の危険予知活動における災害事例データの効果的な活用の障害となっていた。
そこで、鹿島建設はUNAIITとともに鹿島セーフナビを開発した。鹿島セーフナビは、災害事例に関して、鹿島が保有する約5000件と厚生労働省の運営サイトに蓄積された約6万4000件のデータを備え、それらをAIの「自然言語処理技術」を用いて解析することで、災害原因を特定する。
特定した災害原因は、クラスタリング(分類)と代表的キーワードでラベリング(タイトル付け)し、システム上で文章入力した作業内容を災害事例データと照合して、類似作業の災害傾向をグラフで表示。グラフ表示は、災害の原因や状況別などに切り替え可能で、それぞれの災害件数を一目で分かる。
また、解析対象は、鹿島建設と厚生労働省の一方あるいは両方の災害事例を選べる他、作業内容の入力は単語(キーワード)入力に加え、文章での入力にも応じる。加えて、類似作業の災害事例を、災害の原因や状況別、時系列(年ごと)でグラフ表示し、災害事例を直近10年、直近5年で絞り込め、災害事例の詳細を一覧表示することやCSV出力にも対応。
そして、グラフラベルとグラフの一部をクリックすると、それらに含まれる災害事例を一覧表示グラフは、災害ランク(死亡災害や休業4日以上など)ごとに色別で表示する。
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