建設業を悩ます“2024年問題”【前編】違反者は社名公表リスクも:緊急寄稿「時間外労働の上限規制」を徹底解剖(1/2 ページ)
2024年4月1日、5年間の適用猶予期間を終え、建設業でもいよいよ罰則付きの時間外労働の上限規制が始まる。違法と認められた場合、罰則が科されるおそれがあり、悪質なケースでは厚生労働省が企業名を公表することになる。法適用まであと数カ月と迫った今、建設業が何をすべきかを考える。
そもそも働き方改革関連法とは何か?
少子高齢化による労働人口減少、常態化した長時間労働、先進7カ国(G7)で最下位の低い労働生産性――日本の労働環境は、さまざまな課題を抱えている。一方で、働き手の意識やライフスタイルが多様化し、それぞれに合った柔軟な働き方へのニーズが高まりつつある。
こうした社会状況を背景に、新しい働き方の実現を目指して2018年7月に公布されたのが、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(以下、働き方改革関連法)」だ。
働き方改革関連法で整備された関係法律とは、労働基準法や労働安全衛生法、労働時間などの設定改善に関する特別措置法などから成る8本の労働関連法だ。複数の労働関連法を総合的に改正することで、個々の働き手の事情に応じた多様な働き方を選択できる社会変革を図る趣旨となっている。
働き方改革関連法で描く全体像は、大きく8つのテーマに分かれる(下表)。なかでも特に影響が大きいのが、労働基準法改正による「時間外労働の上限規制の導入」だろう。
時間外労働に関しては、これまで大臣告示(限度基準告示※1)で上限時間が示されていたが、法律による規定はなかった。そのため、告示基準を超えた時間外労働が発覚した場合でも、せいぜい行政指導止まりで、法で罰せられなかった。建設業に関していえば、そもそも現行の限度基準告示の適用からも除外されており、事実上、青天井の残業が黙認されていた。
※1 「時間外労働の限度に関する基準」(1998年労働省告示154号)
働き方改革関連法による労働基準法の改正は、こうした状況にメスを入れるものである。時間外労働の上限を法で明確に規定し、違反した場合には罰則が科される。1947年に労働基準法が制定されてから70年で、初めての大改革となる。
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