三井不動産、毎日新聞の新聞販売店を賃貸住宅に再生 建物1棟をコンバージョン:リファイニング建築
毎日新聞社は三井不動産の「老朽化不動産再生コンサルティングサービス」を利用し、東京都板橋区に所有する築26年の新聞販売店の建物を、総戸数14戸の賃貸住宅に再生した。再生サービスは、既存躯体の補修/補強を行い既存建物の8割以上を再生する「リファイニング建築」を活用することで、建物の長寿命化を図りながら、建て替えと比較して工事費用とCO2排出量を低減する。
毎日新聞社と三井不動産は2024年3月8日、三井不動産の「老朽化不動産再生コンサルティングサービス」により、毎日新聞社が東京都板橋区に所有する築26年の新聞販売店を、総戸数14戸の賃貸住宅に再生したと発表した。
再生コンサルティングサービスは、既存躯体の補修/補強を行い既存建物の8割以上を再生する「リファイニング建築」を活用し、建て替えと比較して工事費用を低減するとともに、建て替えに伴うCO2排出量を7割以上削減する。リファイニング建築を活用した再生サービスで、建物1棟のコンバージョンは初の事例だ。
今回再生した建物は、事業環境の変化に伴い新聞販売店としての利用が終了し、収益を生まない状態にあり、老朽化も進んでいた。こうした場合、一般的には建替えによる活用も検討されるが、建築費の高騰による事業性能の低下や、建て替えの過程でCO2を排出することなどが課題だった。
そこで、三井不動産の再生コンサルティングサービスを活用し、新聞販売店時代は1階を事務所と作業室、2階を管理人住居、3階と4階を配達員寮室として利用していた建物を、総戸数14戸の賃貸住宅にコンバージョンした。
建物は地上4階建てのRC造で、敷地面積は約230平方メートル、延べ床面積は約490平方メートル。建物を現在の賃貸マーケットニーズに応じた仕様設備や間取り構成に刷新し、新築同等に再生した。
賃貸住宅に用途を変更するためには大幅な間取りの変更を行う必要があったため、エントランスの位置を変更した他、躯体壁の一部撤去、耐震補強のために外観や居住性に影響の少ない場所へ耐震壁を配置するなどの対策を実施。耐震壁の新設で耐震指標Is値0.6を確保した。エレベーターやオートロック、宅配ボックスも設置している。
再生事業の建物所有者/建物投資の事業主は毎日新聞社で、三井不動産レッツ資産活用部が事業全体のコーディネートを、三井不動産レジデンシャルリースが賃貸企画と建物竣工後の運営管理を担当した。また、設計/監理は青木茂建築工房、施工は日本建設が務めた。
リファイニング建築とは
リファイニング建築は、建築家の青木茂が提唱した建物再生手法。既存の躯体以外を全て解体し、躯体補修や耐震補強で現行法のレベルまで耐震性能を向上させて、デザインや設備を刷新して新築同等に再生する。竣工後に第三者機関の耐用年数評価報告書、検査済証を取得し、建替えと同等の長期融資を可能とする。
三井不動産は老朽化不動産の抱える課題の解決を目的に、青木茂建築工房とともに、リファイニング建築を活用した老朽化不動産再生コンサルティングサービスを展開している。
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