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築50年でも新築同等の耐震性能と内外装、三井不の“リファイニング建築”竣工見学会リファイニング建築(1/2 ページ)

「リファイニング」とは、建築家・青木茂氏により提唱された老朽化した建築物を新築同様に再生する建築手法。リファイニング建築では、既存構造躯体の約80%を再利用しながら、現行レベルの耐震性、柔軟な間取り、快適性などを実現する。構造躯体をそのまま利用するので、建て替えよりも工期が短く、コストを抑えて物件に新築と同じ価値を付与できる利点がある。また、日影規制に代表される新しい建築基準法の適用を受けず、従来の規模を維持したまま物件の機能を更新できるのも特徴となっている。

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 竣工後に時間が経過した建物は、耐震補強や内外観の補修、什器の入れ替えなど、さまざまなリフレッシュ工事を必要とする。リフォームやリノベーションができない物件は、建て替えるしかなかったが、代替する新たな手法として注目されているのが「リファイニング建築」だ。

 リファイニング建築は、青木茂建築工房を主催する建築家の青木繁氏が提唱する再生建築手法。既存建物の構造躯体を生かして耐震性能を強化すると同時に、大幅な外観デザインや間取り変更も可能にする。

 リファイニング建築では、対象物件の構造躯体の約80%を再利用して建物を更新する。そのため、工期短縮が可能で、工事費も建て替えに対して約60〜70%で済む。また、CO2排出量の大幅削減ができるなどの二次的なメリットを持っている。

 リファイニング建築は三井不動産が力を入れる手法の1つで、青木茂建築工房と取り組む6棟目となる東京都新宿区の「シャトレ信濃町」が竣工となり、2022年5月17日に物件竣工見学会が開催された。築50年の賃貸マンションがリファイニング建築によって、どのように建築物が再生されたのか紹介しよう。

追加ブレース無しで現代の耐震性能を実現


リファイニング建築を提唱する青木茂氏

 今回訪問したシャトレ信濃町では、リファイニングのコンセプトとして、耐震性能、コンクリート躯体の耐久性、居住性能の3点を新築同等レベルに向上させることが設定された。

 老朽化が進む建物で耐震性能を高めるには、建物に筋交い/ブレースなどを追加する方法がある。しかし、武骨な筋交い/ブレースは、建物のデザインをスポイルすることが多い。その点、リファイニング建築では、筋交い/ブレースなどを外部に設置することなく、外観を損なわずに、耐震性を高められる。シャトレ信濃町でも、外から見える箇所に筋交い/ブレースは1つも設置されていない。


リファイニングによって蘇った、東京新宿区の「シャトレ信濃町」(1971年竣工、SRC造地上9階建て延べ床面積2610平方メートル)。賃貸物件としての収益性を考慮した更新となった

 シャトレ信濃町では、建物の軽量化とスケルトン状態での躯体に補強を行うことで耐震性を確保した。このほかにも、補強壁や通し柱などを追加して堅牢性を保っている。

 軽量化に関しては、バルコニー部分のコンクリート製手すりを撤去し、ポリカーボネート製とした。これによって、大幅な軽量化とともに、近代的な外観を実現している。


重厚なイメージのコンクリート製手すりを撤去。柔らかに光を通すポリカーボネート製パネルで、軽量化とイメージを改善 出典:三井不動産資料

内装の撤去後、鉄筋工事を経て、耐震用の壁と柱を設置。赤い点線部分は炭素繊維による補強がなされた 出典:三井不動産資料

 居住性では、断熱や遮音を見直した。また、旧来の1フロアあたりの間取り3LDK×3戸を変更し、賃貸マーケットでのニーズを見込み1〜2LDK×5戸の構成とした。


マーケットニーズを鑑みて住居タイプを変更

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