竹中工務店、設計BIMに付加価値を与える共通環境「設計BIMツール」 基本設計に全社適用:BIM
竹中工務店は、設計BIMの情報を統合管理し、構造計算などを一部自動化する「設計BIMツール」を開発し、全プロジェクトの基本設計で適用する。BIMの共通データ環境により、意匠、構造、設備のBIMモデルが相互に連携することで、ZEBなどの付加価値のある設計提案が可能となる。
竹中工務店は2024年3月7日、顧客へに付加価値の高い設計提案を行う「設計BIMツール」を開発し、基本設計に着手する全プロジェクトで適用を開始したと発表した。設計BIMツールの導入により、顧客の要望に沿った複数の提案がスピーディに提供可能になるとともに、建物概要や各種色分け図などのアウトプットを顧客がイメージしやすい形でデータとして共有できる。
さらに、プロジェクトの早期に高度なシミュレーションを実施し、経営課題に関わる情報を高い精度で迅速に提供する。意匠、構造、設備の設計者が作成したBIMモデルを相互に参照、多角的に検証して、顧客が事業計画を推進する際の意思決定をサポートする。
設計BIMツールは3つのソフトウェアで構成
設計BIMツールは、建物の情報と形状をクラウド上で管理する「設計ポータル」、意匠/構造/設備などのアプリケーションをパッケージ化した「設計アプリケーション」、作成したBIMモデルの品質を自動チェックする「モデルチェッカー」 の3つのソフトウェアから成る。
設計ポータルでは、建物に関する「情報」と「形状」のデータを分離して一括管理する。顧客から受け取った各室仕様などの要望や、設計図書に記載していた敷地情報、インフラなどの与条件を、アクセス制限をかけ、プロジェクト関係者内でクラウド上の「情報」として共有する。敷地やインフラなどに関する情報は、設計ポータル上で外部のソーシャルデータと連携させ、情報の取得やデータ入力などを省力化する。また、BIMソフトで作成した意匠、構造、設備に関する建物の「形状」データも設計ポータルにアップロードして集約している。
設計ポータルに集約した情報と形状に関連するデータは、クラウド上で一括管理する。専用のBIMソフトやビュワーを使わず、専用Webサイト上でIFC形式に変換したBIMモデルの閲覧と操作が可能だ。これにより設計者は最新の情報を常に共有、活用できる。必要に応じて顧客と共有も可能だ。
設計アプリケーションは、独自開発した意匠/構造/設備のアプリケーションをパッケージ化したもの。設計ポータルに入力した情報とアプリケーションを連動して稼働させることで、ZEBの検討、騒音シミュレーション、構造計算、設備計算、品質チェックなどを同時並行で実施し、さまざまなシミュレーションを早期に実現できる。
モデルチェッカーでは、設計BIMツールで作成したBIMモデルの品質をチェックする。建築、構造、設備の設計者が作成したBIMモデルを重ね合わせ、モデルチェッカーを作動させることで、整合性や納まりなどを自動で確認可能だ。
なお、設計BIMツールで作成したデータは、竹中工務店がクラウド環境に構築している「建設デジタルプラットフォーム」に蓄積し、施工や建物の引き渡し後の維持管理にも活用していく。
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