竹中工務店が構造設計でAIを全面導入 部材設計など3つの機能を実装:AI
竹中工務店は、独自の構造設計システム「BRAINNX」で、これまでに蓄積してきた構造設計データをAIに学習させ、構造計画から、モデル作成や部材設計などの構造検討、積算、複数案の検討までの省力化で、設計リソースに余剰を生みだし、付加価値提案や高品質化につなげることを目指している。
竹中工務店は、20年以上蓄積してきた構造設計結果データを学習したAI建物リサーチとAI断面推定、AI部材設計の3つで構成される「構造設計AIシステム」を開発し、全面導入したと2023年9月19日に発表した。構造設計AIシステムは、HEROZと共同で開発に当たった。
AI建物リサーチ、AI断面推定、AI部材設計の3つの機能を構造設計システムに搭載
構造設計業務で、2001年に自社開発した構造設計システム「BRAINNX(ブレインエヌエックス)」を採用している。BRAINNXは、建物モデルの入力を容易にする超概略入力機能や強力な断面設計機能、複雑な建物形状への対応機能、地震応答解析機能、躯体積算機能、各種BIMやCADソフトとの連携機能を備え、基本設計段階から詳細設計段階まで幅広く利用できる構造設計システム。
BRAINNXで設計した建物約500件、30万以上の構造部材の諸情報は、2021年11月から運用を開始した社内の営業から維持保全に至るデータを一元的に蓄積し、AIなどで高度に利活用するための基盤「建設デジタルプラットフォーム」に集積している。
建設デジタルプラットフォームに集積された構造部材の諸情報は、構造設計AIシステムに学習させ、BRAINNXの機能として実装することで、設計業務期間で計算作業に使う時間を大幅に削減させる。構造設計の時間短縮によって、顧客への設計提案の迅速化につながるとともに、新たな付加価値の提案に費やす時間が増えることで、より高品質な建物設計を目指す。
構造設計AIシステムの活用としては、類似性の高い過去事例を自動探索し、最適な構造計画を生成する「AI建物リサーチ」がある。プロジェクト初期段階で、構造計画提案を支援し、計画条件ごとに複数の類似建物が提示されるため、構造計画別の部材数量を容易に比較し、合理的な構造計画の方針決定につながる。
また、「AI断面推定」では、構造設計結果を学習したAIが、柱や梁(はり)などの配置条件や構造的特徴から必要断面寸法を推定。設計初期段階で、顧客の速やかなプラン検討を可能にする。
「AI部材設計」では、時間のかかる繰り返し計算をサポート。部材ごとに個別に算定された仕様をまとめ、より合理的に安全性や生産性の高い最適な構造設計をサポート。繰り返しの検討業務を自動化することで、付加価値の提案に要する時間をあらかじめ確保し、高品質な建物設計を実現する。
今後は、AIの学習に必要な構造データを常に最新の情報に更新し、AIを進化させ、さらなる顧客の満足度向上を目指す。
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