大阪・関西万博会場にCO2排出量を低減する地盤改良工法を初適用:施工
竹中工務店は、コンクリート解体材由来のCO2固定微粉を使用し、従来の工法と比較してCO2排出量を低減する地盤改良工法を開発。大阪・関西万博の三菱未来館の地盤改良の一部に同工法を初適用し、地盤改良体としての性能を満たしていることを確認した。
竹中工務店は2024年1月31日、コンクリート解体材から再生した微粉を炭酸化したCO2固定微粉(CCU材料)を使用し、従来の工法と比較してCO2排出量を約5%低減した地盤改良工法「CUCO(クーコ)-CO2固定地盤改良」を開発したと発表した。
大阪・関西万博の三菱未来館(設計監理:三菱地所設計)で、工事用仮設路面の地盤改良に初適用し、地盤改良体としての性能を満たしていることを確認した。適用範囲は地盤改良エリア約600平方メートルのうち約200平方メートルで、固定されたCO2は約160キロ。
CUCO-CO2固定地盤改良の成果は、長期間の地盤改良体の強度やCO2固定量の調査に活用し、2030年には液状化抑止などに使用する地盤改良への適用を目指す。
コンクリート解体材に含まれるカルシウム分にCO2を固定
竹中工務店は、鹿島建設、デンカとともに、NEDOグリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発」プロジェクトの一環で、事業を実施するコンソーシアムCUCO(クーコ)の幹事会社として、コンクリートの製造過程で排出されるCO2排出量が実質ゼロ以下の「カーボンネガティブコンクリート」の開発を進めている。
CUCO-CO2固定地盤改良には、コンクリート解体材や地盤改良体の解体材に含まれるカルシウム分にCO2を固定させ、コンクリート用の骨材やCCU材料として再利用し、CO2を貯留する技術を使用している。
構造物の建て替えや解体に加え、地盤改良体の解体増加により大量発生するコンクリート解体材などのリサイクルは、建設業界にとって課題となっている。一方で、国内セメント需要の約2割にあたる年間約800万トンが地盤改良として使用されており、同工法による地盤改良を促進することで、CO2排出量の低減が見込まれる。
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