鹿島建設、柱や梁の少ない超高層ビルを実現する新構法を浜松町再開発に初適用:施工
鹿島建設は、柱や梁の少ない複合用途の超高層ビルを実現する「K-ARCS」構法を開発し、「浜松町二丁目地区第一種市街地再開発事業」に初採用した。最適な構造、耐震/制震技術の組み合わせにより、住宅系と業務系の複合用途に対し、自由度の高い空間を実現する。
鹿島建設は2024年2月6日、建物の用途に合わせた混合構造により、柱や梁(はり)が少ない複合用途の超高層ビルを実現する「K-ARCS(カークス)」構法を開発したと発表した。同構法を、鹿島建設が設計・施工を手掛ける「浜松町二丁目地区第一種市街地再開発事業」(東京都港区)で初採用した。
建物全体の揺れを低減するとともに、柱や梁の本数を少ない自由度の高い空間を実現
K-ARCS構法では、CFT構造と超高層鉄筋コンクリート造技術「HiRC(ハイアールシー)工法」を組み合わせ、さらにCFT造建物の揺れの制御に適した制震装置「HiDAX(ハイダックス)」を搭載する。用途に応じた最適な構造、耐震/制震技術の組み合わせにより、従来のRC造の超高層住宅よりも柱/梁を減らせる。これにより、超高層の住宅系と業務系の複合用途に対して、単一構造では難しかった自由度の高い開放的な空間を実現できる。
土台の役割を担う下層階は、CFT構造にHiDAXによる制震性能を加えたことで、高い強度と耐震性を備えた。K-ARCS構法を採用した超高層建物は、従来の耐震架構と比べて、地震発生時の揺れ幅を最大約30%低減、後揺れの時間を約50%短縮できるという。微小な揺れの状態から減衰効果を発揮するため、台風時の強風による揺れにも有効だ。
また、上層階はHiRC工法によるRC構造で、住戸間の遮音性や躯体の耐久性を確保するとともに、強風時の揺れを抑えるなど安全性を向上させ、住居に適した環境を提供する。
浜松町二丁目地区第一種市街地再開発事業について
「浜松町二丁目地区第一種市街地再開発事業」は地下2階/地上46階の超高層ビル(最高高さ185.43メートル)に、共同住宅のほか、事務所、公益施設、地下鉄施設、飲食店舗、物販店舗などを整備する。第1期引渡しは2024年11月までに完了、全体引渡しは2026年12月の予定。
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