超高層ビル解体の新標準となる環境配慮型工法を清水建設が実用化:新工法
清水建設は、超高層ビルを対象とした環境配慮型の解体工法を開発した。高度成長期に竣工した多数の超高層ビルが更新を迎えるなか、超高層ビル解体の新標準になると位置付けている。
清水建設は、東京都内で施工中の「内幸町一丁目街区南地区第一種市街地再開発事業解体工事」に、デジタル技術を取り入れた環境配慮型超高層解体工法「グリーン サイクル デモリッション」を適用した。
プラズマ切断をブロック解体に展開し、CO2排出削減と作業効率化を実現
グリーン サイクル デモリッションは、ブロック状に切断した躯体を大型クレーンで最上階から吊(つ)り降ろし、地上で破砕、分別するブロック解体工法をベースに構築した工法。解体のサイクル工程を下層階へ順に受け渡しながら、デジタル技術を活用し、システマチックに解体を進める。他の工法と比べ、安全性が高く、騒音や粉塵(ふんじん)の発生量も抑えられ、周辺環境に与える影響を最小化できる。
鉄骨躯体の解体には、独自開発の自動プラズマ切断装置「シミズ プラズマ カッター」を用いる。サイクル工程に組み入れた下層階での鉄骨柱や梁(はり)の先行切断に活用することで、CO2排出削減と作業時間の短縮につながる。高温プラズマを熱源として利用するため切断スピードが速く、ガス切断と比較して作業時間を3割ほど削減する。
また、200ボルトの電源さえがあれば使用できるため、ガス切断に必要なガスボンベの搬出入も不要となる。フォークリフトを使って切断機ユニットを切断箇所にセットした後は、タブレットから指示するだけで自動切断がスタートする。
今回の現場には、清水建設のARシステム「Shimz AR Eye」を鉄骨切断箇所の可視化に活用した。タブレットを切断箇所にかざすと、切断機ユニットの設置位置と取り付け角度を示すBIMモデルがカメラ映像に重ね合わせて投影されるため、切断の精度が増し、作業効率化も実現する。
グリーン サイクル デモリッションでは他にも、「現地調査/施工計画における360度画像/点群データの活用」「少水量型超高圧ウオータージェットシステム(S-Jet)によるアスベスト除去」「ロボットによる床切断位置の墨出し」など、解体工事の各プロセスに先進技術を適用し、生産性の向上と環境負荷の軽減を図っている。清水建設は、新工法をこれからの超高層ビル解体の標準工法と位置付け、事業者へ技術提案を進めていく考えだ。
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