万博工事で竹中工務店がStarlink搭載の“移動する工事事務所”を試験導入:大阪・関西万博
竹中工務店は、大阪・関西万博の工事現場で、迫る建設業2024年問題に対し、現場と工事事務所の往復を削減するべく、移動する工事事務所として、「牽引式オフグリッド型モバイルハウス」を導入した。
竹中工務店は2023年11月14日、工事敷地内を自由に移動しつつ、工事事務所としての機能を発揮する「牽(けん)引式オフグリッド型モバイルハウス」を開発し、大阪・関西万博工事に同年11月から試験導入したと公表した。
ソーラーパネルとStarlinkで、電気や通信のインフラが無くてもOK
広大な建設現場では、工事担当者が工事事務所と現地を往復することが大変な負担となっている。そのため竹中工務店は、建設現場の生産性向上と執務環境の改善を目指し、新たな取り組みとして「牽引式オフグリッド型モバイルハウス」を導入。オフグリッド型モバイルハウスには、通常の工事事務所と同様の機能が備わり、作業効率を向上させることが期待されている。
モバイルハウスは、公道走行時はトレーラーハウスのように牽引車で引っ張る。工事敷地内は、市販の駆動装置(ムーバー)を装着しているため、リモコンで低速移動する。既設の電源や通信設備、電気や通信のインフラが無い場所でも、ソーラーパネルと蓄電池、制御機器から成る自立電源システムと、衛星インターネット「Starlink(スターリンク)」で自律通信できる。
ソーラーパネルで発電した電気は、蓄電池に充電し、モバイルハウス内の空調設備や事務機器などに必要な電気を供給する。モバイルハウス本体はクロコアートファクトリー製のRoomette Longで、電源システムは日立ハイテクの協力を得て開発した。
竹中工務店では開発理由を、2024年4月からの建設業への時間外労働の上限規制の適用に向け、建設工事での業務効率向上が喫緊の課題となっていることを挙げる。「特に万博工事のような広大な敷地では、移動の効率化がポイントだと指摘。モバイルハウスを活用することで、3Kといわれる建設工事の執務環境の改善にも役立て、上限規制に応じた働き方改革の実現につなげたい」としている。
今回の試験導入は、建設工事における生産性向上や執務環境の改善に貢献する取り組みとして位置付け、その効果を検証した上で、移動式工事事務所や作業員の休憩所(熱中症対策室)としての活用も視野に入れている。
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