鹿島が「成瀬ダム」で完全自動化施工を実現 自動ダンプの運搬と荷下ろしで「現場の工場化」へ:スマートコンストラクション
鹿島建設は、自動化施工システム「A4CSEL」を適用した「成瀬ダム」の堤体打設工事で、新たに自動ダンプの運搬と荷下ろしを可能にし、製造から打設に至る全作業を完全自動化させた。建機の管制は、約400キロ離れた神奈川県小田原市の鹿島西湘実験フィールドで、3人の担当者が遠隔管理している。
鹿島建設は2023年10月13日、国土交通省発注の秋田県東成瀬村で進めている「成瀬ダム堤体打設工事」で、自動化施工システム「A4CSEL(クワッドアクセル)」の機能向上や適用範囲の拡大を検証している。A4CSELは、Automated/Autonomous/Advanced/Accelerated Construction system for Safety,Efficiency and Liabilityの4つのAを取った鹿島建設の造語で、建設機械の自動運転を核とした自動化施工システムを指す。
2023年10月には、現地発生材(石や砂れき)とセメント、水を混合した「CSG(Cemented Sand and Gravel)」の自動搬送と自動ダンプトラックでの運搬や荷下ろしが実現。既に適用している自動ブルドーザのまき出し、自動振動ローラによる締固め作業と合わせ、CSGの製造から打設に至る全作業の完全自動化に成功した。
自動ダンプによる運搬と荷下ろしの最適化で
A4CSELは2015年から、ダム工事を中心に6件の現場に導入している。成瀬ダムの工事では、2020年度からCSG打設にA4CSELを導入し、現場進行に合わせて順次、建機の自動化を進めてきた。
しかし、CSG製造プラントから堤体までの約2.5キロの工事用道路は、有人運転の工事用車両と共用のため、自動ダンプトラックは安全面を考慮して堤体上での部分的な稼働とし、工事用道路では実証レベルにとどまっていた。
長距離ベルトコンベヤーやSP-TOM(Special Pipe Transportation Method)を介し、CSGを製造プラントから堤体まで、直接かつ自動で供給可能になった。そのため、堤体に自動搬送されたCSGを荷受けした自動ダンプトラックが、最適な経路と走行方法で高効率かつ高精度にブルドーザによるまき出し地点まで運搬し、荷下すことで、材料製造から打設に至る全ての作業が完全自動化した。鹿島建設が成瀬ダムで目指してきた「現場の工場化」が実現したことになる。
自動ダンプトラックは、右岸のCSG積込み地点から左岸の打設エリアに向かって最大で約600メートルを“後進走行”で運搬。後進走行は、有人運転では困難だが、自動運転だからこそできる方式といえる。また、搬経路途中での切り返し動作をなくし、走行時間や距離を大幅に短縮し、堤体内の打設地点へのCSG材の連続かつ最速運搬につながる。
A4CSELの管制体制は、2021年に開発した複数現場の自動化建設機械を一括管理する「遠隔集中管制システム」を成瀬ダムにも採用。現在、自動ダンプトラックなど自動化された建設機械が14台稼働。約400キロ離れた神奈川県小田原市の鹿島西湘実験フィールドから3人の管制員(ITパイロット)が、現場に配置した自動ブルドーザ、自動振動ローラ、自動ダンプトラックなど計14台の建機を管理し、2交代制でCSGの堤体打設を昼夜にわたって連続施工している。
遠隔施工により、管制員を現地に派遣することなく、現地で管制するのと同人数で、ダムの施工に必要な高速で大容量の施工が実現できることが証明されている。
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