福島県飯舘村の盛土工事で複数建機の自動・自律運転と遠隔操作に成功、大林組:建機自動化
大林組は、福島県飯舘村で、自動運転と自律運転を行う複数台の建設機械を連携させ、遠隔操作を成功させただけでなく、建機の自動運転と遠隔操作の開発と実証を推進するためのフィールド「インキュベーションスタジアム」を大阪府枚方市の西日本ロボティクスセンターに構築した。今後は、現場とインキュベーションスタジアムを活用し、建機の遠隔操作や自動運転と自律運転の技術開発を推進し、工事現場の無人化を目指す。
大林組は、現場実証として、福島県飯舘村で、自動運転と自律運転※1を行う複数台の建設機械を連携させ、遠隔操作を成功させた他、建機の自動運転と遠隔操作の開発と実証を推進するためのフィールド「インキュベーションスタジアム」を大阪府枚方市の西日本ロボティクスセンターに構築したことを2022年10月24日に発表した。
※1 自動運転と自律運転:あらかじめプログラムされた動作を実行することを自動運転、センシングした周辺状況から最適な方法を選択・判断して自ら実行することを自律運転と定義。
「ヒートマップ形式転圧回数確認図」を自動取得するシステムも開発
同社は、建設DXの一環として、「ロボティクスコンストラクション構想※2」を提唱し、建設現場の安全性と生産性の向上を目的に、ロボット技術の開発を行っている。
※2 ロボティクスコンストラクション構想:動的CPS(Cyber Physical Systems)の技術により、現実空間とサイバー空間を結び、建設プロセスを高度化させる構想。施工では、遠隔化、自動化、自律化に活用することで、人を生かし、やりがいをつくり、人的にも環境的にも持続可能な建設プロセスの実現を目指している。
一方、2021年10月から2022年6月まで実施した福島県飯舘村での現場実証では、作業内容の入力と指示を行うことで、複数の建機が連動して協調運転するように制御する「建機フリートマネジメントシステム(建機FMS)」を構築し、自動運転と自律運転を行う3台の建機を連携させ、盛土工事を達成しただけでなく、飯舘村の現場と大阪府にある大林組のネット回線をつなぎ、建機の遠隔操作を実現した。
具体的には、土砂のダンプへの積み込み、場内運搬と荷降ろし、敷きならし転圧といった一連の作業を、自律運転に対応したバックホウ※3や自律運転キャリアダンプ、自動運転ブルドーザの連携により行った。連携にあたっては、建機の遠隔指令と監視に応じた建機FMSを通じて、遠隔地から指令を送ることで制御した。
※3 自律運転バックホウ:大林組がNECと共同開発中のバックホウ自律運転システムの適用範囲を盛土現場へ拡張し利用している。
加えて、各建設機械の運行履歴データや盛土出来形データをクラウドに自動保存しモニタリングすることで、歩掛データとして定量的に施工の進捗を確認しながら施工計画の最適化を図った。
なお、自動運転ブルドーザの転圧回数を色で可視化する「ヒートマップ形式転圧回数確認図」や「走行軌跡図」を自動取得するシステムを開発することで、施工結果を品質管理書類の出来形データとして自動出力することを可能とし、施工管理業務の効率化も果たした。
今回の実証では、主に施工現場から約450メートル離れた現場統合管理室で、遠隔指令と監視を行った。ちなみに、将来的に遠方の管理拠点から遠隔監視を行うことを想定し、約550キロ離れた西日本ロボティクスセンターや埼玉県川越市の「東日本ロボティクスセンター」といった施設からも、現場統合管理室と同様の指令および建機の操作を実施した。
上記の取り組みにより、現場設備を最小限とし、管理拠点から施工支援までを行えるようになれば、省人化とコストの削減につながるだけでなく、施工現場の作業員総数が減り、建機と作業員の接触事故が減少する見通しだ。
また、西日本ロボティクスセンター内に構築したインキュベーションスタジアムでは、建機の遠隔操作や自動運転と自律運転による工事現場の無人化に向けた実証実験を行っている。
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