熟練オペレーターに代わる「自動運転ローラ」を鹿島道路が開発、現場適用を立証:建機自動化
鹿島道路は鹿島建設とともに、設計経路を自動的に往復走行し、周囲に走行目標物がない場合や曲線部でも適正パターン(往復距離、ラップ幅)での転圧が可能な自動運転ローラを開発した。
鹿島道路は鹿島建設と共同で、舗装建設機械の自動化に取り組んでおり、第一弾として舗装工事に用いる自動運転ローラを開発したと2022年11月16日に公表した。自動運転ローラは、アスファルト舗装作業に加え、路盤工の起振状態での転圧も想定している。
±10センチ以下の高精度で直線/曲線走行を自動化
今回、開発した自動運転ローラは、設計経路を自動的に往復走行し、周囲に走行目標物がない場合や曲線部でも適正パターン(往復距離、ラップ幅)での転圧が可能であり、熟練オペレーターに代わるシステムと期待されている。
開発の背景として、建設業ではオペレーターの高齢化と若手就業者の減少に伴い、技能工確保と技術伝承が喫緊の課題となっていることを挙げる。そのため、鹿島道路では、今後の労働者不足への対応の1つで、舗装建設機械の自動化の検討を進め、その第一歩としてローラの自動化に着手した。
自動運転ローラは、自動化の基盤に、鹿島建設が既に現場導入して実績を重ねている「A4CSEL(クワッドアクセル)」を活用。A4CSELは、人間がタブレット端末で複数の建設機械に作業計画を指示することで、無人で自動運転を行う次世代建設生産システムを指す。
機体は、酒井重工業製7トン級舗装用振動ローラ「SW654」に改造を加え、GNSSおよびジャイロセンサーなどの位置姿勢計測装置や制御用PCなどを搭載し、±10センチ以下の高精度で、直線/曲線走行の自動化を実現した。
位置姿勢計測とは別に、既存構造物などとローラの接近を画像センサーで計測し、構造物などとの接触を自動的に防止しつつ作業を継続する機能を備える。
また、鹿島道路で独自開発したブレーキアシストシステムも採用し、人や物を検知した際や事前に作成した走行経路や走行範囲から逸脱しても、走行を自動停止する。自動停止以外にも、遠隔リモコンスイッチで自動走行を遠隔停止することもできる。
実証実験では、これまでに試験ヤードでの動作検証を繰返して機能の信頼性を確認し、自動ローラの現場運用が可能となった。2022年7月に5万平方メートル規模の「ふかや花園プレミアム・アウトレット駐車場舗装工事」現場への試験的導入を実施。自動ローラが備えている機能が期待通り発揮されることを確認し、現場運用が可能だと立証された。
鹿島道路では今後、ローラの自動化技術を他の建設機械へも展開し、舗装業界の人手不足対策と安全の向上につなげていくとしている。
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