大成建設がリコーのプロジェクターで300インチ墨出し投影に成功 共同開発はBUILTがきっかけ?:2025年度に実用化後は外販も視野に(2/2 ページ)
大成建設は、プロジェクションマッピングを利用した独自の墨出し技術「T-iDigital MARKING」をリコーとの共同で、投映面積を300インチに拡大させるなどの高度化を図った。プロジェクター技術を有するリコーが協力した契機となったのは、驚くことにBUILTのメールマガジンだったという。
2025年度の実用化後はリースで外販も
リコー SC事業部 CS事業推進室 開発三グループ リーダー 久保良生氏は両社の協業について、「BUILTのメールマガジンで、大成建設がプロジェクションマッピングで墨出しに取り組んでいると知ったことが契機となった。当社のプロジェクターは産業用が無く、大成建設と協力しながら現場で実証を重ね、建設用に特化したカスタマイズで300インチの投影に対応した。防塵も施しているので、ホコリの舞う工事現場の運用にも耐える仕様だ」と説明する。
投影手順は、AutoCADなどで作成した2次元図面やPDF化したデータを読み込み、現場には基準尺となるARマーカーを4カ所設置。その後、プロジェクター上部に備え付けた床面を映すカメラで読み取ることで投映位置を認識し、自動で画像の縮尺や回転角を調整して位置合わせを行う。その際に大成建設独自の自動補正システムで、床面の段差や設備工事の立ち上げ配管といった障害物やプロジェクターのレンズによる投影画像のゆがみも自動補正(キャリブレーション)する。
大成建設の大川氏は、「プロジェクターは、高さが変えられる脚立台車と一体で運用する。これまでは次の作業エリアに機材を移動するたびに、投映画像の縮尺や回転角調整、図面の位置合わせといった準備作業を全て手動で行っていたが、一連の準備作業を自動化することで時間が短縮し、墨出し作業全体の効率が向上。以前は、設備であれば、電気や水道などの工種ごとに墨出しが必要だったが、高度化したT-iDigital MARKINGでは特別な技能が無くとも1人だけで完了する」とそのメリットを話す。
現在は、実現場での検証を進めており、2LDK/3LDKのマンション建設現場では、同じような間取りの繰り返し作業になることもあって人の手による作業と比べ、半分の作業時間に短縮した。2023年12月には、千葉の現場での試行も決まっているという。「今回、披露したのはあくまで試作機。これからも実証を続け、2025年度には実用化し、その先にはリース会社を介しての外販も見据えている。用途も建築の設備や仕上げだけでなく、土木のトンネル工事で耐震補強のアンカーを打つ箇所を投影したいとの要望も寄せられているので応えていければ」(大川氏)。
リコーの久保氏は、「大画面をさまざまな現場環境で映すには輝度が欠かせないため、現行機の3000ルーメンだが、2024年度をめどに高輝度化にも着手する。その後は、低い位置からでも投影する仕組みも検討していきたい」と展望を語った。
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