鹿島とリコーのVR空間を利用した“遠隔現場管理システム”に、360度カメラとライブ配信の機能追加:VR
鹿島建設とリコーは、新潟県長岡市の大河津分水路工事に適用していたVRを活用した遠隔の現場管理システムに、360度カメラとライブストリーミングの機能を追加した。新機能により、複数人の関係者がいつでもどこからでも、遠隔立ち合い検査ができる環境が整った。
鹿島建設とリコーは、2021年5月から国土交通省 北陸地方整備局発注の大河津分水路新第二床固改築I期工事に、「リコーバーチャルワークプレイス」を導入し、VRを活用した遠隔現場管理を行っている。
このたび新機能として、360度カメラ「RICOH THETA」とライブストリーミングサービス「RICOH Live Streaming API」で、VR空間内のコミュニケーションを360度ライブ映像で行える機能を追加したことを2021年12月20日に公表した。新機能で、複数人がいつでも遠隔から、360度ライブ配信映像内に同時参加できる環境が構築された。
360度ライブ映像で見落とし箇所無く、複数人が現場全体を確認
近年、Webカメラや携帯端末などを用いて、現場を遠隔から管理する取り組みが活発になってきている。大河津分水路工事でも、リコーバーチャルワークプレイスを用いた現場の遠隔管理行っているが、従来のWebカメラは画角が限定的で、遠隔からの参加者は現場全体の状況を十分に把握することが困難だった。
そこで、東京都港区の鹿島本社の一角にシステムの設備一式を常設し、新潟県長岡市の大河津分水路工事の360度ライブ映像配信ブースを設けた。これにより、いつでも東京から新潟県の現場に入り込み、現場状況がリアルタイムで確認できるようになった。今後、360度カメラの設置現場を増やすことで、本社に居ながら、さまざまな現場の遠隔パトロールなどが可能になる。
360度カメラを用いる利点は、これまでの限定的な画角では確認しきれない箇所も見落とすことなく、遠隔にいる参加者それぞれが、あたかも現場にいるかのように周囲の状況を把握できるようになる。
また、参加者同士は360度のライブ映像内で、自由にコミュニケーションをとれるため、以前よりも迅速な合意形成が実現する。さらに、より多くの関係者が手軽に遠隔で参加できるように、PCやiPadなどの端末からでも、VRゴーグルを装着した参加者と同じ360度ライブ映像を視聴することができるようにもしている。
また、鹿島建設では遠隔現場管理システムを工場の遠隔検査にも適用。大河津分水路工事で使用する鋼殻ケーソンは、北九州の工場で製造されており、これまでは鋼殻ケーソンの外観検査のため、工事関係者全員が現地に赴く必要があった。今回は、360度カメラとWebカメラを持った社員1人が現地を訪れ、工場検査をライブ配信し、制作物の細部はウェアラブルカメラの高解像映像で映し、発注者や現場担当者、本社などの核関係者は遠隔から参加。遠隔検査は支障無く完了し、これにより、移動時間の短縮、関係者のスケジュール調整手間の削減など、大幅な生産性の向上につながった。
今後は、遠隔パトロールや遠隔立会など、建設現場での対象範囲を拡大するため、必要な実施手順を整備するとともに、屋外での長期使用に耐えうる設備の耐久性やシステムの操作性を改善していく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ICT:鹿島がVR空間を利用し現場の遠隔管理を実現、点群データや現場映像などを確認可能
鹿島建設は、リコーが開発したVRシステム「リコーバーチャルワークプレイス」の現場への導入を開始した。 - JFMA調査研究部会のFM探訪記(2):SDGsタスクフォースとユニバーサルデザイン研究部会
本連載では、日本ファシリティマネジメント協会(JFMA) 専務理事 成田一郎氏が「JFMA調査研究部会のFM探訪記」と題し、JFMA傘下で、マネジメントや施設事例、BIM×FMなどの固有技術をテーマにした合計18の研究部会から成る「調査研究部会」での研究内容を順に紹介していく。第2回では、2003年に発足した「ユニバーサルデザイン研究部会」と2020年に活動を開始した「SDGsタスクフォース」にスポットライトを当てる。 - 現場管理:屋外現場にも対応する薄型・軽量の「42インチ電子ペーパー」をリコーが発売
リコーは、建設現場向けに、薄型かつ軽量で防塵・防水の性能も備えた42インチ電子ペーパーデバイス「RICOH eWhiteboard 4200」を発売した。同時に専用のクラウドサービスも展開し、工事現場と事務所など遠隔にあるデバイス同士での図面や情報の共有も可能になる。 - 情報化施工:東急建設とリコー、VRで建設現場の合意形成を迅速化する実証実験開始
東急建設とリコーは、VR(バーチャルリアリティー)の技術を活用し、建設する構造物をVR空間で関係者が共有し、施工上の情報共有・合意形成を迅速に行うことで生産性向上を目指す実証実験を行うと発表した。 - 情報化施工:建設現場の360度画像をクラウドで共有、現場の進ちょく確認などを効率化
リコーは、360度画像を活用したデータサービス「RICOH360」向けに「RICOH360 Projects(リコーサンロクマル プロジェクツ)」の提供を開始した。建設現場の状況共有業務を効率化する。 - 情報化施工:「EX-TREND 武蔵 Ver.20」を発売、電子黒板アプリ対応で出来形帳票作成を効率化
建設現場における生産性向上を図る取り組みの1つである小黒板の電子化は、全都道府県で運用されるまでに普及しつつある。福井コンピュータは、こういった状況を考慮し、土木施工管理システム「EX-TREND 武蔵」の新バージョンで、電子小黒板の取り込みに対応した。