継手の改良とECVP管で、無電柱化事業の高コスト体質に切り込むクボタケミックス:メンテナンス・レジリエンスTOKYO2023(3/3 ページ)
なかなか進まない日本の無電柱化事業。進行を妨げる要因の1つはコスト高だ。クボタケミックスは、新たな継手開発で使用部材や施工工数を減らし、部材そのものの材質も変更することで、この課題に挑んでいる。
新基準に合わせて材質を変更し、コスト縮減につなげるECVP管
もう1つ、管の材料を変更することで無電柱化事業のコスト縮減につなげる商品として展示されていたのが、「ECVP管」。通信管に使用されるVP管と同じ材料でつくられた低コストタイプ電力管だ。
「これまで電力管には、電力管専用に開発されたCCVP管(耐熱対衝撃性塩化ビニール管)が使用されてきた。CCVP管は、耐衝撃性に優れ、電力ケーブルからの熱にも強い特性を持つが、コストがかなり割高だった。高コストを解決するために開発されたのが、ECVP管だ」(ブース担当者)
ECVP管開発のきっかけは、2018年4月に関東地方整備局が電力管性能基準の耐衝撃性能を見直したことだ。以前の耐衝撃性基準は、当時施工現場で使用していたツルハシによる衝撃に耐えられることを想定したものだった。だが、現在の工事は、ツルハシの代わりにスコップが使用されているため、スコップ作業で発生する衝撃に耐えられれば十分と判断され、耐衝撃性基準が緩和された。
規制緩和を受け、クボタケミックスもその会員として参加する硬質ポリ塩化ビニール管メーカーの団体「C.C.BOX管路システム研究会」が、耐衝撃性能ではCCVP管よりも劣るが、性能面ではCCVP管と同等程度の管強度(扁平強度)と導通性があるECVP管を規格化した。その規格に沿って、クボタケミックスもECVP管を販売している。
クボタケミックスのECVP管の特徴は、受口側にはゴム軸受口を採用しているため、施工性が高いことにある。差し口側には、面取りがあらかじめ施されているので、電力ケーブル引き込み時に、ケーブル被膜を傷つける心配もない。また、CCVP管と同寸法のためCCVP管からの切り替えが容易だ。
ECVP管は、国土交通省の「道路の無電柱化低コスト手法導入の手引き(案)ver.2」に無電柱化の低コスト化が期待される商品として掲載されており、同省の技術公募「無電柱化における管路部等の低コスト化に資する技術」でも低コスト化技術として選定されている。
開発当初は、関東を中心に普及していたが、現在は北海道や北陸、近畿、四国、沖縄で採用が進んでいるとのことだ。
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