橋の点検でキャラが強くなるスマホゲームの企画が最優秀賞:第1回インフラマネジメントテクノロジーコンテスト
インフラマネジメントテクノロジーコンテスト実行委員会は、主催する「第1回インフラマネジメントテクノロジーコンテスト」で徳山工業高等専門学校のチーム「わくわくピーナッツ」が「協働促進」部門でエントリーした企画「ICT+スマホゲームによる気付けばインフラメンテ依存症!?」が最優秀賞を受賞したことを発表した。
インフラマネジメントテクノロジーコンテスト実行委員会は2021年3月15日、東京都千代田区の3331 Arts Chiyodaで、全国57校に及ぶ高等専門学校の生徒を対象にした公共インフラ向けのコンペティション「第1回インフラマネジメントテクノロジーコンテスト」の表彰式を開催した。
ゲームへの課金による収益はインフラメンテナンス用の財源として還元
同委員会は、第1回目のテーマを「広報・合意形成・住民参加・省力化/合理化技術・代替サービス・仕組み」に定め、2020年9月1日〜2020年10月15日、地域がインフラのマネジメントやメンテナンスに参画する「協働促進」部門と、インフラマネジメントやメンテナンスの課題を解決する「技術・アイデア」部門で企画を募った。その後、17校・30チームによりエントリーされた企画の1次審査を行い、9校・13チームのファイナリストを決定した。
第1回インフラマネジメントテクノロジーコンテストの表彰式では、ファイナリストの企画を最終審査した結果として、徳山工業高等専門学校のチーム「わくわくピーナッツ」が協働促進部門でエントリーした企画「ICT+スマホゲームによる気付けばインフラメンテ依存症!?」が最優秀賞に輝いたことを発表した。会場では、テレビ会議システムを活用し会場に参加したわくわくピーナッツの担当者が、ICT+スマホゲームによる気付けばインフラメンテ依存症!?を説明した他、審査委員長を担当した長岡技術科学大学 工学部 名誉教授 丸山久一氏が審査講評を行った。
ICT+スマホゲームによる気付けばインフラメンテ依存症!?は、全国の住民が架空のスマートフォンゲーム「インフラとるとる」を楽しみつつ、橋梁(きょうりょう)の点検を行えるという企画。
インフラとるとるは、スマホで撮影した橋梁などの画像から、構造形式や環境、色、GPSなどの情報をAI画像認識で解析し、このデータをベースに、ゲーム上で対戦させられるキャラクターを即時生成する。同時に、画像の分析で得られた数値情報の初期値を基に、乱数アルゴリズムによって、キャラクターの初期ステータス(攻撃力、防御力、スピード、体力、魔法など)を設定。各地のユーザーは橋の画像を基に作り出したキャラクター同士を戦わせられる。乱数アルゴリズムとは特定のアルゴリズムに従ってランダムな数を算出するシステム。
作成したキャラクターのステータスを上げる方法は、キャラクターにアイテム「妖精」を与えるか、強力な武器を装備させるかの2種類を用意している。妖精と武器はゲーム上で課金することで手に入れられ、課金による収益の一部は、キャラクターを生成した橋を管理する自治体にインフラメンテナンス用の財源として還元する。
また、利用者がスマホを使用し実空間で橋の損傷箇所を撮ることで、その画像を基にゲーム上のAIが橋についた傷の種類と程度を判断し、妖精や優れた武器を創出し、ユーザーに提供する。
わくわくピーナッツの担当者は、「インフラとるとるは、橋の損傷がひどい画像ほど、貴重な武器を創造するため、ユーザーはダメージが甚大(じんだい)な橋梁を探し、スマホで撮るようになると想定している。利用者が撮影した橋梁画像の中から、損傷が重大なものは、専用クラウドサーバに保存される。蓄積された画像は、地域の管理者が橋の維持管理に使う他、ゲームで行ったAI診断の結果とともにビッグデータとして、民間企業と学術機関の研究開発部門に共有し、損傷の傾向分析やニーズの調査、新技術・商品の開発などに役立てる」と効果を語った。
インフラとるとるの発展性に関して、わくわくピーナッツの担当者は、「ゲームのアップデートや新バージョンのリリースで、橋だけでなく、目視に対応した全てのインフラに適用可能なことだ」と話す。
長岡技術科学大学の丸山氏は、「今回のコンペティションは、1次審査では各高等専門学校から提出された企画書で判定しファイナリストを選定した。最終審査ではそれぞれの高等専門学校が作ったプレゼンテーション動画で受賞作品を選んだ。全てのプレゼン動画が高いクオリティーだった。最優秀賞に入賞した企画のプレゼン動画はとくにユニークで分かりやすかった」と評した。
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