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「2030年にはインフラメンテが崩壊、技術者数は約30%減」マイスターエンジニアリングが超重要インフラの技術者動向を調査調査レポート(1/2 ページ)

マイスターエンジニアリングは、鉄道や電気など国内の「超重要インフラ」を支える企業や人材を取り巻く環境について独自に調査した。その結果、7年後の2030年までに、メンテナンスが重大な危機に瀕するとの課題が浮き彫りとなった。

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 建築設備のメンテナンスやエンジニアリング、太陽光発電システムの施工などを提供するマイスターエンジニアリングは、鉄道や電気などの「超重要インフラ(クリティカルインフラストラクチャ)」の技術者を対象に動向を探った調査レポートを2023年4月28日に公表した。併せて、同社の取り組みとして、「門戸開放と科学的教育」「業界の現場DX推進」「技術サービス連邦化」の推進を発表した。

2030年には技術者3割減で超重要インフラのメンテナンスが成り立たなくなる?

 超重要インフラとは、国民生活や経済活動の基盤となるインフラのうち、他で代替することが困難で、機能が停止もしくは低下すると社会に大きな混乱を招くと見込まれるもので、日本政府は「情報通信」「金融」「航空」「空港」「鉄道」「電力」「ガス」「政府・行政サービス」「医療」「水道」「物流」「化学」「クレジット」「石油」の14分野を位置付けている。

 このところ頻発する通信設備や金融機関のATMにおける障害発生、鉄道の電気設備トラブルなど、重要なライフライン系の障害は、復旧が極めて困難で、対応に時間を要するほど多くの利用者の生活や経済活動に深刻な被害をもたらす。

 老朽化するインフラが増加する一方で、新たなインフラが建設され、マイスターエンジニアリングでも超重要インフラのメンテナンスを担う企業や人材の不足が2015年以降、危機的な状況に瀕していたという。

 危機感を持った同社が実施した独自調査では、超重要インフラのメンテナンスが7年後の2030年には成り立たなくなる状況にあることが判明した。現状のままでは、日本社会は2030年に深刻な事態に陥る。そのため、マイスターエンジニアリングでは、1.文系学生や未経験者、女性など技術者になりにくかった層への働きかけと、理論に基づいた教育を行う「門戸開放と科学的教育」、2.メンテナンス業務にデジタル化を導入する「業界の現場DX推進」、3.事業承継などに苦しむ企業をグループとして招き入れ、採用や研修を担うなど、幅広い現場での技術提供体制を整える「技術サービス連邦化」を推進していくとしている。

マイスターエンジニアリングの「門戸開放と科学的教育」「業界の現場DX推進」「技術サービス連邦化」の3領域での取り組み
マイスターエンジニアリングの「門戸開放と科学的教育」「業界の現場DX推進」「技術サービス連邦化」の3領域での取り組み 提供:マイスターエンジニアリング

メンテナンス技術者数は、2045年に2000年比で約半減

 調査レポートによると、メンテナンスを支える技術者(電気・電子・電子通信技術者とその他電気工事従事者)の数は2000年以降、減少を続け、2045年には2000年の約76.4万人と比べると、約半減の約36.5万人にまで減ると分かった。同様に減少が見込まれる全体のパイとなる生産年齢人口の推移と比較すると、減少スピードは1.5倍以上のペース。

技術者数人数の時系列推移/予測
技術者数人数の時系列推移/予測 提供:マイスターエンジニアリング

 メンテナンスを支える企業は、小規模事業者が現状でも中心で、後継者不足などもあり、廃業が加速する可能性が高いと予測。

メンテナンス企業数の従業員人数別、将来予測
メンテナンス企業数の従業員人数別、将来予測 提供:マイスターエンジニアリング

 一方、再生エネルギーシフトの潮流の中でメンテナンスを必要とする「自家用工作物」は継続増加し、メンテナンスニーズはさらに高まる見込み。

自家用電気工作物設置件数(再エネ含む)
自家用電気工作物設置件数(再エネ含む) 提供:マイスターエンジニアリング

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