東名リニューアル工事にトヨタ未来創生センター開発の「施工シミュレーター」を初適用、大林組:デジタルツイン
大林組は、トヨタ自動車未来創生センターが開発した「施工シミュレーター」を東名リニューアル工事に適用し、3DCGによるヴァーチャル現場でのシミュレーションで、作業工程や作業員数の省力化を実現した。
大林組は2023年3月24日、トヨタ自動車未来創生センターが開発した「施工シミュレーター」を東名リニューアル工事に適用し、トヨタ自動車の協力のもと、3DCGによる工事現場の再現と作業シミュレーション技術で、工程や作業員数の最適化を実現したと発表した。
ヴァーチャル現場で作業時間と作業員数を2割削減
東名多摩川橋東名リニューアル工事は、老朽化した橋梁(きょうりょう)のコンクリート床版を新しい床版に取り換える工事で、渋滞などの影響を最小限にすることが求められており、大林組の「DAYFREE」工法を応用して施工している。しかし、夜間の限られた時間で工事完了するため、工程の綿密な事前検討が必須となっている。
そこで大林組は、施工シミュレーターを床版設置後、主桁と固定するための無収縮モルタル打設や隣り合う床版と接合するためのスリムNEOプレートの設置などの作業工程に適用した。その結果、工程の最適化を図り、作業時間と作業員数をそれぞれ2割削減できることを確認したという。
施工シミュレーターは、施工場所の高速道路や施工機械、新しい床版など、目に見える部分を3DCGで表示し、ヴァーチャル現場を構築。ヴァーチャル現場内には、作業員の動きを再現し、施工機械や他の作業員との連携作業を見える化させた。
バーチャル現場でシミュレーションした結果、当初計画の工程では待機している作業員が多く、作業員数に対し時間のムダが多く発生していることが分かった。そのため、施工順や次工程へのタイミングの見直しを行いつつ、各作業を作業員に適切に割り当てることで時間のムダをなくした。最終的には、当初は60分必要だった工程を50分まで短縮され、作業員数も12人から10人に削減した。
ヴァーチャル現場のシミュレーションは、アニメーションでリアルな現場へも展開し、作業開始前の作業員向け説明資料に使用した。現場環境と作業が可視化されたことで、詳細な工程検討や作業員の配置が可能となり、作業工程の深い理解にもつながったという。
今回は、部分的な工程最適化を実施したが、今後は昼間工事と夜間工事の最適作業人員の配置や能力を考慮した作業振り分けによる平準化などにも、施工シミュレーターを活用することで、さらなる「カイゼン」を見込む。
大林組は、施工シミュレーターを高速道路のリニューアル工事だけでなく、繰り返し作業の多い工事や鉄道などの限られた時間での切り替え工事などにも適用し、生産性改善とリスク回避による安全施工と高品質を実現していく方針だ。
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