障がい者が操作する分身ロボットの接客カフェ「DAWN ver.β」で5Gの遠隔操作を実証:5G
NTT東日本など3社は、分身ロボット「OriHime-D」が接客する「分身ロボットカフェDAWN ver.β」で、ローカル5Gと端末同士の通信品質を制御する技術を組み合わせ、障がい者が武蔵野市のセンターからロボットを遠隔操作する実証実験を実施した。
東日本電信電話(NTT東日本)、日本電信電話(NTT)、オリィ研究所は、オリィ研究所が東京都中央区日本橋本町で運営する「分身ロボットカフェDAWN ver.β」常設実験店で活用されている分身ロボット「OriHime-D」を対象に、NTT東日本が提供するローカル5Gと、NTTが開発した端末同士の通信品質を制御する技術で、通信遅延によるタイムラグを感じない遠隔操作の実証実験を実施したと2023年1月に発表した。
大容量かつ低遅延な無線アクセス環境のローカル5Gを構築
NTTは、オリィ研究所が2021年6月21日にオープンした障がいなどの外出困難者が分身ロボットを操作して接客を行う「分身ロボットカフェDAWN ver.β」常設実験店に協賛し、共同実証実験を行った。
OriHime-Dなどの人間が操作する分身ロボットは、会話や表情といった音声や映像によるコミュニケーションから、人や障害物を避けながらの移動といった精密な動作まで、場所や状況に応じてさまざまな活動を臨機応変かつ自由に行うことが期待されている。
カフェ内で分身ロボットは、Wi-Fiで無線接続されているが、Wi-Fiはアンライセンスバンドの無線周波数を用いていることもあり、外部電波との干渉などによる無線通信品質の低下が発生しやすく、タイムラグや通信断による操作の中断により、操作者のストレス増大や操作精度の低下、カフェでのサービスに支障が生じる問題があった。
そのため、カフェでナチュラルなロボット操作を実現するには、外部電波などの影響を受けにくい無線アクセス環境の整備に加え、無線通信区間も含めた分身ロボットと操作者間での通信遅延量を低減する必要があった。
実証実験では、こうした課題に対応するため、外部電波などの影響を受けにくく高品質な無線アクセス環境のローカル5Gをカフェ内に構築。NTTが開発した通信品質を制御する技術を組み合わせ、遠隔ロボット操作に関する実証実験を展開した。
実験内容は、東京都武蔵野市の「NTT武蔵野研究開発センタ」、東京都調布市にある「NTT中央研修センタ」、東京都中央区の「分身ロボットカフェDAWN ver.β」を全長100キロの光ファイバーで接続。カフェ内に整備したローカル5Gを経由し、武蔵野研究開発センタ内から、障がいのある操作者がカフェのサービススタッフ業務を行った際のロボット操作感と、アプリケーション間でのネットワーク性能評価を行った。
検証結果は、ローカル5Gを活用することで、従来のWi-Fiを用いて分身ロボットを操作していた際に発生していた無線通信の接続が途中で切断される事象、映像品質の劣化による遠隔操作のしづらさが解消された。また、数十ms(ミリ秒)以上の遅延量増加が発生する大容量のダミートラフィックをローカル5Gへ付加した条件でも、NTTが開発した通信品質制御技術を分身ロボットに関わる映像や音声、ロボット制御信号といった通信に適用することで、付加されたダミートラフィックの影響を受けない低遅延性能が維持できることも証明された。
さらにNTTクラルティ協力のもと、分身ロボットを操作した操作者にインタビューを行い、ローカル5Gと通信品質制御技術を組み合わせた遠隔ロボット操作では、従来のネットワーク環境で感じていた操作に関わるストレスが低減され、「ロボット操作や利用者との接客もネットワーク遅延を感じることなくスムーズに行えた」といった意見が得られた。
各社の役割としては、NTT東日本は実証実験の全体統括とローカル5G環境構築、技術検証を、NTTは通信品質制御技術を適用したネットワーク性能評価やロボット操作性評価、オリィ研究所は分身ロボットカフェDAWN ver.βやOriHime-Dの提供をそれぞれ担った。
実証実験の結果を受け、分身ロボットの適用領域の拡大や低遅延アプリケーションによるナチュラルなコミュニケーション、障がいや病気などの理由で外出困難な人々の雇用と活躍の場の拡大、場所にとらわれない新たな働き方の促進が期待されている。
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