敷地面積50haのロボット開発拠点「福島ロボットテストフィールド」、2020年3月に開所:メンテナンス・レジリエンス OSAKA 2020
福島県南相馬市に、ロボット開発拠点「福島ロボットテストフィールド」が開所した。敷地面積50ヘクタールの広大な土地に、インフラ点検、災害対応エリア、水中/水上ロボットエリアなど、さまざまなロボットの実証実験を行う設備が揃(そろ)っている。
福島イノベーション・コースト構想推進機構は、「メンテナンス・レジリエンス OSAKA 2020」(2020年7月29〜31日、インテックス大阪)内の「国際ドローン展」で「福島ロボットテストフィールド」のジオラマを展示した。
ロボットの多様な使用環境を敷地内に再現
福島イノベーション・コースト構想は、東日本大震災及び原子力災害により失われた浜通り地域の産業基盤を新たに創出する国家プロジェクトだ。廃炉、ロボット、エネルギー、農林水産などを重点分野とし、産業集積や人材育成、交流人口の拡大に取り組んでいる。
福島ロボットテストフィールドは、福島イノベーション・コースト構想に基づき、ロボットの使用環境を拠点内で再現して、研究開発、実証試験、性能評価、操縦訓練を行える研究開発拠点として、2020年3月31日に全面開所した。
東西約1000メートル、南北約500メートルの敷地内には、「無人航空機エリア」「インフラ点検・災害対応エリア」「水中・水上ロボットエリア」「開発基盤エリア」が設けられている。
無人航空機エリアは、ドローンの実証実験や操縦訓練を目的とした試験場だ。500メートルの長い滑走路も整備されており、長距離のテスト飛行も可能。広く確保した緩衝地帯は、衝突回避や不時着、落下、物品投下などの実証エリアとして想定している。
また、同エリア内の風洞棟には、風速20m/s(メートル毎秒)までの風を起こす装置があり、ドローンの空力特性、飛行性能や突風・脈動風に対する機体の安定性試験も行える。
インフラ点検・災害対応エリアには、全国で老朽化が問題となっている橋やトンネルの対策を講じるために、試験用の橋梁(きょうりょう)とトンネル、プラントを設置。施設内の橋やトンネルには、コンクリートにわざとひび割れや剥離、崩落箇所が施されており、ドローンや車両に搭載したセンサーで画像を撮影し、分析ができるかを検証する。
橋の構造も、手前と奥側及び右側と左側でそれぞれ異なる仕様としている。手前半分は鉄骨が下に入っていたり、左右ではガードレールの違いがあったりと、1つの橋で4種類の形状を再現している。
試験用トンネルは、延長50メートル。両側にあるシャッターを閉鎖すれば、長いトンネルの中央部も再現できる。老朽化の点検だけではなく、トンネル内の交通事故をシミュレーションした各種試験やロボットの操縦訓練も行える。
市街地フィールドには、住宅やビルとともに、本物の信号機、標識を配置した交差点を設置し、自動運転システムの実験に対応している。さらに災害時を想定し、コンクリートや木材のガレキを使った走行試験や3階建てのビルには破壊してよい壁もあり、人員の捜索や救助のトレーニングにも活用できる。
水中・水上ロボットエリアには、水害で冠水した市街地を再現した「水没市街地フィールド」の他、屋内水槽試験棟を整備している。水没市街地フィールドは、水害で冠水した市街地を想定し、ドローンによる情報収集の他、捜索・救助訓練に使用する。
屋内水槽試験棟には、ダムや河川を模した大小の水槽を備える。大水槽は幅30メートル、深さ7メートルで、小水槽は幅5メートル、深さ1.7メートル。ともに水中/水上ロボットの操縦やインフラ点検の訓練に使用する。
福島ロボットテストフィールドは、ロボットで水中インフラ点検や災害対応の実証試験のために整備された国内唯一の試験場だという。設備の使用や見学は、メールで問い合わせ後に、日程調整が必要。
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