燈が「ChatGPT」を建設用語に特化させた「AKARI Construction LLM」の提供開始、チャット形式でBIMデータのAI検索など:AI
東京大学発AIスタートアップ企業の燈は、時間外労働の上限規制やベテランの技術承継、資材価格の高騰などの問題に対し、ChatGPTなどの大規模言語モデルを建設業のデータに特化させた「AKARI Construction LLM」で解決を目指している。
燈は2023年3月16日、これまで集積した設計図書やBIMをはじめとする建設データを用アルゴリズム・AIの技術をさらに活用するべく、ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)を建設業のデータに特化させた「AKARI Construction LLM」の提供を開始すると発表した。
建設業固有のデータを理解したAI・アルゴリズムで3つの課題を解決
「日本を照らす燈となる」というミッションを掲げる燈では、建設業の抱える時間外労働の上限規制の5年猶予後の適用開始、職人の高齢化による大量離職問題、資材価格の高騰の3つの課題に対して、現場での残業が減るように書類作成業務を効率化する技術、ベテランの経験を引き出して活用できる仕組み、公開されている情報と社内の知見の結び付けるツールが求められていた。
そこで燈は、3つの課題にアプローチする過程で、建設業固有のデータを理解したAI・アルゴリズムを構築してきた。昨今のChatGPTをはじめとするLLMは、一般常識やWebデータを背景に応答することは得意な一方、それ単体だと専門知識を扱うのは得意ではなかった。しかし、燈の技術を結び付けることで建設業の各会社に特化させ、業務レベルで活用することが可能となる。そのため、「より早く建設業の方々に燈の技術を使っていただきたい、AIの技術発展の恩恵を受けてもらいたいとの想いから今回のリリースに至った」という。
従来は各種建設会社に眠る測量データ、設計図書、BIMデータ、仕様書をはじめ、議事録や大量の紙、PDFのデータ活用ができていなかった。燈ではこれまでに、大成建設との設計図書のデータ化や東洋建設とのBIMモデルの情報分析技術などをゼネコンの協力を得て開発してきた。
AKARI Construction LLMは、ChatGPTなどのLLMに燈の有する建設特化のデータ認識技術を組み合わせることで、建設業務プロセスのさまざまな効率化を実現する。その活用例としては、「過去の標準/特記仕様書や議事録から知りたい事例を聞くとエビデンス付きでの参照」をはじめ、「2階の床仕上げ材について値段を聞けば、仕上げ表からの拾いやGoogleで調べた仕上げ材単価をもとに計算」、「燈技術で設計図書やBIMモデルの属性情報を符号化することで、チャット形式で必要な情報の検索」などが想定されている。
今後の展開については、協業しているユーザーには提案などを始めており、パッケージとしては燈の建設業DXで培ったノウハウを背景に、どのようなデータを活用すべきか、どうデータをAIに与えるかといった部分から、各社の要望に応じてサポートしていく。
また、燈の請求書処理サービス「digital billder」を通じて、既に契約している全国多数のゼネコンにも、AKARI Construction LLMの建設業の請求書に関する一部機能の提供を予定している。
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