AI搭載の“スーツケース”で視覚障がい者の歩行をサポート、清水建設らコンソーシアム活動期間を延長:ロボット
アルプスアルパイン、オムロン、清水建設、日本アイ・ビー・エムの4社は、共生社会の実現を目指して正会員として活動する「次世代移動支援技術開発コンソーシアム」での活動期間を1年間延長すると決めた。また、実用度を高めた新しいモデルも開発。東京都中央区の日本橋で実証実験を実施した。
アルプスアルパイン、オムロン、清水建設、日本アイ・ビー・エムの4社は2023年1月25日、共生社会の実現を目指して正会員として活動する「次世代移動支援技術開発コンソーシアム」での活動期間を2023年11月30日まで1年間延長すると発表した。
4社は視覚障がい者が自立して街を移動し、日常の活動をスムーズに行うためのナビゲーションロボット「AIスーツケース」の開発を進めており、社会実装に向けた取り組みをより加速させるため延長に至った。また、実用度を高めた新しいモデルを開発し、東京都中央区の日本橋で実証実験を実施したという。
実用度を高めた新しいモデルを開発し、実証実験で有効性を証明
次世代移動支援技術開発コンソーシアムはアルプスアルパイン、オムロン、清水建設、日本アイ・ビー・エム、三菱自動車工業の5社によって2020年2月に設立。視覚障がい者のアクセシビリティーと生活の質向上を目的に、AIを活用した移動やコミュニケーション支援のためのウェアラブルデバイスとスーツケース型ナビゲーションロボットのAIスーツケース開発と、社会実装に向けた実証実験とデモンストレーションを行っている。
今回開発した実用モデルは、バッグメーカーのエース協力のもと、走行時安定性の向上や交換可能なバッテリーの採用によるメンテナンス性の向上、発熱の低減などを実現した。さらに市街地を連続走行できるように、ソフトウェアも改良した。
具体的には、日本アイ・ビー・エムは、衛星を用いた高精度なRTK-GNSS測位を用いた屋外走行を実現するとともに、屋内と屋外にまたがるルートを連続して走行する技術を開発。オムロンは周囲の歩行者の視線や体の動きによって、歩行者がそのまま直進してくるのか、または進行方向を変えて回避してくれるのかを事前に予測する技術を実用化した。
AIスーツケースは、視覚障がい者にハンドル上に設置している振動子で進行方向を伝えている。アルプスアルパインによる新型ハンドルでは、ディスク型の方向提示装置により、曲がる方向を正確かつ直感的に提示する。
また、現在のAIスーツケースは、事前に壁や障害物形状データ、基本ルート地図、店舗や施設のデータを作成する必要があるが、日本アイ・ビー・エムは早稲田大学と共同で地図データが無い環境でも、通路の交差点を検出しながらナビゲートする技術研究を進めている。
実証実験では新モデルを用いて、三井不動産が管理する日本橋室町地区の5つのビルと東京メトロ三越前駅地下道を結ぶ市街域内の店舗や施設を自由に移動する、初となる大規模なパイロット実験を2022年9月から1カ月間実施し、成功した。
実験には、約40人の視覚障がい者が参加。実験前の数分間の練習で、30分から1時間の間安全に利用できることを確認した。参加者からは、「人とぶつからずに移動できて感動した」「自分一人で歩ける達成感がある」「長い距離を歩いてウィンドウショッピングをした気分になれた」といったコメントが寄せられ、多くの視覚障がい者が自立した街歩きを実現する新しい技術の有用性を再確認できたという。
なお、コンソーシアムでは、実用度を向上した「実用モデル」の開発と先進技術の開発を同時に推進。先進技術としては、各社が屋内外連続走行技術の実現や周囲の歩行者に対する行動予測技術の向上、スーツケースハンドルによる進行方向提示の改善、地図なし走行に向けた研究の推進に取り組んでいる。
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