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インフラ維持管理で応用が見込める、AIの「決定木」や「アンサンブル学習」【土木×AI第17回】“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(17)(1/2 ページ)

連載第17回は、データ分析によく使われ、将来を予測する回帰や分類で活用が見込める優れた「決定木」や「アンサンブル学習」といったAI技術のインフラ分野での応用について解説します。

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 国土交通省で「全国道路施設点検データベース」が公開※1されるなど、機械学習に利用できるデータの整備が建設分野でも進んでいます。今回は、こうした多種多様なデータの分析によく使われ、将来を予測する“回帰”や“分類”に優れた性能を発揮する「決定木」「アンサンブル学習」のインフラ分野での応用について採り上げます。

※1 国土交通省報道発表資料「道路施設の詳細な点検データの公開開始」

「決定木」と「アンサンブル学習」とは何か?

 決定木は、下図のように、上側が根で、下側が葉という木をひっくり返したような形になっており、条件分岐によって結論に至る仕組みです。下の例では、100橋について、補修がなされているかどうかを分類しています。

 損傷が有り、かつ交通量が多い橋梁(きょうりょう)は、補修されている割合が高く、損傷有交通量小、損傷無交通量大、損傷無交通量小の順に補修割合が減る傾向にあります。そのため、どのような条件で補修されることが多いかなどの分岐を辿(たど)り、分析結果を解釈することが容易なのが決定木の大きな特徴です。反面で、学習したデータの偏りなどの影響を受けやすく、単体では必ずしも精度が高くありません。

決定木の例
決定木の例 筆者作成

 精度を高める工夫としては、例えば下図のように、もともとのデータからランダムに抽出してデータセットを作り、それぞれに対して決定木を生成する「ランダムフォレスト」という方法があります。

 ランダムフォレストでは、決定木に応じて、多くの結果が出てしまうわけですが、回帰であれば平均、分類であれば多数決といった方法で統合し、精度の高い結果が得られることが知られています。このように、数多くの学習モデルを用いて精度を向上させるのが、アンサンブル学習です。

ランダムフォレスト
ランダムフォレスト 筆者作成

連載バックナンバー:

“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト

本連載では、土木学会 AI・データサイエンス実践研究小委員会 副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。

 文献2の「機械学習に基づく豪雨による土砂崩壊発生地点の予測と説明可能AIによる予測結果の分析」※2では、近年頻発する豪雨の際に、土砂崩壊が発生する地点の予測にランダムフォレストを適用しています。下図は、2018(平成30)年7月豪雨による広島県の斜面崩壊の詳細分布を推定した結果です。図中の右下に、学習の性能を表す「混同行列」※3が示されています。地図中の点の色は、混同行列の分類の色に対応しています。

ランダムフォレストによる土砂崩壊発生地点の推定結果
ランダムフォレストによる土砂崩壊発生地点の推定結果 出典:※2

※2 「機械学習に基づく豪雨による土砂崩壊発生地点の予測と説明可能AIによる予測結果の分析」桑折奎吾,劉ウェン,丸山喜久/AI・データサイエンス論文集3巻J2号p326-338/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2022年

※3 「混同行列」について:【第13回】土砂崩落やインフラ点検など、用途ごとで最適化するためにAI性能を評価するには?

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