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“スマートシティー”を実現するAI 車種別の交通量解析など最新研究【土木×AI第11回】“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(11)(3/3 ページ)

連載第11回は、産業の枠を超えて広がりをみせる“スマートシティー”の分野で、AIの最新研究を紹介します。

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振動波形の特徴量をAI抽出、橋を通行する車種を判別

 自動車が通行することで、橋が振動するのは皆さんも体験されたことがあるかと思います。その振動の情報から、車種を判定する試みも行われています※5。橋では、橋脚間の支間中央で振動が大きくなることが知られていますが、下図のようにそこに加速度センサーを設置した検討結果が報告されています。


橋の支間中央での加速度センサーの設置位置 出典:※5

 下図が加速度センサーから得られた振動の波形で、乗用車や大型トラック(試験車)が走行した際のデータです。大型トラックの通行時には振幅が大きくなりますが、乗用車が連続して通行する場合も、同程度の振幅になることが分かります。

 このことから、振動の大きさのみでは車種を識別できません。そこで、振動波形の特徴量をAIで抽出することで、車種を判別しています。また、振動の応答は重さや速度の影響も受けるため、画像のみでは分かりにくい積載重量も検出できる可能性があります。


加速度応答の時刻歴と通過車両の例 出典:※5

※5 「橋梁加速度のウェーブレット散乱変換とニューラルネットワークによる交通車両の分類」竹谷晃一,佐々木栄一/AI・データサイエンス論文集1巻J1号p158-167/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2020年

 以上の研究成果のようにAI活用によって、歩行者や自動車などの個々の動きを高い解像度や精度で効率的に把握できるようになりつつあります。これまで以上に、きめ細かな人の動きが分かることで、円滑で安全な交通網や新交通システムの整備だけでなく、賑(にぎ)わいのある街づくりなど、より多彩な施策に生かすことができます。都市空間におけるAI活用も、スマートシティーの進展に伴って、さらなる技術発展が期待されます。

著者Profile

阿部 雅人/Masato Abe

ベイシスコンサルティング 研究開発室 チーフリサーチャー。防災科学技術研究所 客員研究員。土木学会 構造工学委員会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会 副委員長、インフラメンテナンス国民会議 実行委員を務める。近著に、「構造物のモニタリング技術」(日本鋼構造協会編/コロナ社)がある。

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