“鋼構造物の現場DX”をもたらす先端事例 機械学習のボルト締め付け判定など【土木×AI第9回】:“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(9)(1/3 ページ)
連載第9回は、さまざまな業務制約に加えて、豊富な経験や専門知識も必要とされるインフラ鋼構造物の施工や維持管理の業務で、作業効率化や品質向上をもたらすAI活用について、多数の論文を参照しながら、先端研究を紹介します。
「鋼」は、コンクリートと並んでインフラによく用いられる材料です。橋などの鋼構造物の設計・施工・維持管理のさまざまな場面でも、AIやICTの活用が進んでいます。
作業性を事前確認するVR溶接、機械学習のボルト締め付け自動判定
鋼構造物の製作・施工では、鋼材同士の接合がポイントとなります。そのなかで、「溶接」はもっともよく用いられる方法の1つです。狭隘(きょうあい)な箇所や手の届きにくい位置では、品質の管理が困難になるため、事前に作業性を確認する必要がありますが、図面上だけで評価するには経験や高い技術力が求められます。
そこで、仮想現実(VR)技術を利用して、溶接作業を事前に仮想空間で試すことで、設計段階で作業性を確認する技術が開発されています※1。このようなVR技術は、仮組や架設計画などへの適用も期待されています。
★連載バックナンバー:
本連載では、土木学会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会で副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。
架設の現場では、「高力ボルト接合」が広く用いられています。高力ボルトでは、締め付けが適正になされることが重要です。1次締め状態の締め付け箇所ひとつひとつにマーキングを行い、本締めの後にマーキングのズレを目視で確認することで、正常に締め付けられたかどうかをチェックしています。しかし、構造物に用いられるボルトの数は膨大ですから、一本一本を全数確認することも簡単ではありません。
下記に示す文献2「画像処理によるボルト本締め確認作業自動化システムの作成」※2では、機械学習によって、撮影画像からボルトを抽出したうえで、マーキングを検出し、締め付けの良否を判断しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.