スケッチや3Dモデルから多様なファサードデザインを生成するAI技術を開発、大林組:AI
大林組は、米国シリコンバレーのSRI Internationalと共同で、スケッチや3Dモデルからさまざまなファサードデザインを提案するAI技術「AiCorb」を開発した他、AiCorbを設計者向けプラットフォーム「Hypar」と連携することで、ボリュームデザインを含めて一気通貫で設計する新たな手法を確立した。今後は、今回開発したAI設計効率化手法を改良し実用化を進めながら、Hyparも含めて、設計者の業務を補助するオープンな機能として広く使える形での公開を予定している。
大林組は、米国シリコンバレーのSRI International※1(SRI)と共同で、スケッチや3Dモデルからさまざまなファサードデザインを提案するAI技術「AiCorb」を開発し、設計者向けプラットフォーム「Hypar」と連携することで、ボリュームデザインを含めて一気通貫で設計する新たな手法を確立したことを2022年3月22日に発表した。
※1 SRI International:世界で最も大きな非営利独立研究機関の1つ。1946年にスタンフォード大学により地域の経済発展を支援する目的で設置され、1970年に完全に大学から独立し、米国の非営利科学研究組織となる。大林グループとは、建設技術の共同開発に関する戦略的パートナーシップを締結している
ボリュームデザインからファサードデザインまでを一気通貫で作成可能
建築設計の初期段階では、環境条件や顧客の要望に基づき、建築基準法などに合わせて、建物のボリュームや平面計画、魅力的なファサード設計案を用意し、顧客に提案し対話することで、合意形成を進めていく。
従来は、設計者によりアイデア出しやスケッチとCADを用いたデザイン案の作成を全て手作業で行っていたため、準備に時間と手間がかかっていただけでなく、提案内容が顧客の要望に合わない場合は、同様のプロセスで再度検討し直さなければならなかった。
そこで、大林組は、SRIと連携してAIを活用し、建物の形状を記したスケッチや3Dモデルから複数のファサードデザインを自動で生成する技術のAiCorbを開発した。
AiCorbは、スケッチや3Dモデルをベースに、複数のファサードデザイン案を瞬時に生成するAIと、デザイン案をHypar上で3Dモデル化するAI技術が搭載されている。さらに、AiCorbと設計用プラットフォームのHyparを連携した新たな設計手法では、ボリュームデザインからファサードデザインまでを一気通貫で作れ、顧客からの要望をその場で具現化し合意形成を効率的に進められる。
具体的には、AiCorbは、さまざまなデザインをAIに学習させたことで、建物のアウトラインをスケッチしたデータなどを読み込ませるだけで、データごとに異なる複数のファサードデザインを瞬時に生成する。そのため、顧客の要望を聞き取り、イメージをすり合わせるための時間と手間が削減され、設計初期の迅速な合意形成につながる。
加えて、設計用プラットフォームのHyparと連携することで、生成されたファサードデザインを基に必須となる各種パラメータを推定し、3Dモデルを作成するため、スケッチから生成されたデザイン案を入力すれば、すぐにファサードデザインとボリュームデザインを兼ね備えた3Dモデルとして顧客に提示することが可能。また、画像だけでは伝わりづらい立体的な情報も活用して議論を進められ、合意形成の効率化を後押しする。
なお、Hyparは、AutodeskでRevit用ビジュアルプログラミングツールDynamoの開発に携わったIan Keoughと同じくAutodeskでジェネレーティブデザインに関する開発に従事していたAnthony Hauckらによって2018年に創業されたHyparの設計者向けプラットフォーム。
設計者向けプラットフォームのHyparは、住所や平面外形といった基本情報をベースに、建物の高さや階高など、いくつかの重要な変数を定義するだけで、建設予定地の周辺環境を考慮した3次元的なデザインを生成と検討ができる。ユーザーが独自の機能を開発・共有することが可能で、従来のツールを利用するよりも簡単かつ高速にデザイン検討することが特徴。
今回、Hyparは、日本市場への導入を目指し、大林組が手掛ける東京都の中規模物件を対象に機能の検証を行い、斜線制限を可視化する機能など、必要となる機能を追加実装しながら、実用性を確認した。
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