【年間記事Top10】2022年1月フルハーネス政省令が完全施行、建設業の働き方改革など:2021年BUILT年間記事ランキング(2/2 ページ)
前年から続く、新型コロナウイルス感染症のまん延防止措置に伴う、労働環境の変革を促す流れが継続し、現場でも遠隔での業務をはじめ、Web会議や現場管理アプリに代表される各種ITツールの導入、ワークプレースの多様化など、withコロナに即した働き方が業界内の裾野まで浸透し、日常に定着したともいえる1年でした。また、一時は開催も危ぶまれた東京オリンピック・パラリンピックも無事に開かれ、五輪特需に沸いた建設需要も一段落。大都市圏での新築マンションや大規模再開発はまだ残存するものの、今後は国が掲げる国土強靭化計画に基づく、“防災・減災”や“インフラ老朽化対策”が需給のメインとなっていくのではないでしょうか。2021年にBUILTで公開されたランキングTop10の記事を紹介しながら、関連する年間トレンドも振り返ります。
2022年1月2日にフルハーネスの政省令が完全施行
2位には、2020年に引き続き「2月1日から建設業で5m超の高所は“フルハーネス原則化”、新構造規格への適合も」がランクインしました。
本記事では、厚労省が2019年2月1日に施行した“フルハーネス型”墜落制止用器具(旧名称:安全帯)の原則使用などを盛り込んだ改正政省令で何がどう変わるのかをまとめています。改正政省令では、一定の経過措置期間後の2022年1月2日以降は、建設業の高さ5メートル超えの高所作業でフルハーネスの着用を義務化する以外にも、安全帯の規格を改正した「墜落制止用器具の規格」で新構造規格への適合を求めており、不適合製品は同年1月2日からは、旧構造規格に基づく胴ベルトやフルハーネスは使用禁止となり、メーカーや代理店も製造や販売ができなくなります。
トップ10には入りませんでしたが、2021年に公開された「もうすぐフルハーネス完全原則化、電柱工事もカバーした3Mの“柱上作業用フルハーネス”」も関連記事として多く読まれ、フルハーネス原則使用の改正政省令に関係する動向については、2022年1月2日の完全施行日を前に関心の高さを窺わせました。
ランキングに戻ると、3位は「野村総研が2020〜2040年度の住宅着工戸数を予測、コロナ影響は2020年度の第3四半期がピーク」、4位は「2021年度の国交省予算案から見る建設市場“民間は大幅減も公共工事が下支え”」、5位は「コロナ禍で新築と中古の住宅市場は低迷するも、リフォームのニーズは増加」の順となり、建設/不動産の市場で新型コロナウイルス感染症がどのように影響を与えているのかは、昨年に続き、読者の関心の的となったと分かります。
6位で採り上げた“磁取棒(じどりぼう)”は、大成建設が新潟精機とともに開発し、伸縮する棒の先端に取り付けた強力マグネットで型枠内などに落ちた鉄くずを効率的に回収する便利ツールです。
両社は2020年にも、小型・軽量の汎用型スチールメジャー「くるくるメジャー」を開発しており、製品記事は2020年のBUILT年間記事Top10で4位にランクイン。期せずして、2年連続で年間Top10内に入る結果となりました。
建設業での残業規制対策の実例やビルシステムセキュリティ【続・座談会】
7位は、国内で経営コンサルタント業界パイオニア・タナベ経営の連載「建設専門コンサルが説く“これからの市場で生き抜く術”」の第2回となりました。
本連載では、タナベ経営が開催している建設業向け研究会「建設ソリューション成長戦略研究会」を担う建設専門コンサルタントが、業界が抱える諸問題の突破口となる経営戦略や社内改革について、各回テーマを設定してリレー形式で解説しています。第2回は、猶予期間後の2024年4月から建設業にも適用される「時間外労働の上限規制」にどのように対応していくべきかを業務改善の実事例を交えて紹介しています。
続くランキング8位にランキング入りしたのは、「【続・座談会】“ICSCoE”の育成プログラム修了メンバーが再結集!コロナ禍でセキュリティ意識はどう変わったか?」。
一昨年、経済産業省が「ビルシステムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン第1版」を公表したことに伴いBUILT主催で催した「ビルシステムにおけるサイバーセキュリティ対策座談会」の場を再び設け、業界を横断したメンバーを招集。今回は、竹中工務店 情報エンジニアリング本部 粕谷貴司氏もゲスト参加し、コロナ禍または五輪前後で、ビルシステムに対するセキュリティ意識がどのように変わったか、セキュリティ対策にどうアプローチするのがベストなのかを、ビルオーナー、ITベンダー、ゼネコン、各ステークホルダーの立場で出席者が熱論を交わしました。
Revitユーザー会の初代会長を務めた伊藤久晴氏の新連載もスタート
今回惜しくも、ランキングに入りませんでしたが、2021年には、Revitユーザー会の初代会長を務めた伊藤久晴氏の連載「日本列島BIM改革論〜建設業界の“危機構造”脱却へのシナリオ〜」がスタート。現在、第2回まで公開されており、好評を博しています。
2021年は、コロナ禍での建設/不動産の動向やwithコロナに即した働き方の在り方、コロナ対策を含む新しいソリューション群などに、注目度の高さが垣間みえました。
これからもwithコロナは続くことが予測されるものの、その先のafterコロナやニューノーマルに建設業界がどう対応していくべきかを、“建設×テクノロジー”の観点からさまざまな取材を通して解決策を提示していければと思います。また同時に、国が掲げる国土強靭化計画に基づく、“防災・減災”や“インフラ老朽化対策”のICT活用をはじめ、世界的な潮流となっているSDGsやカーボンニュートラルといった次の市場を占うキーワードで、建築・建設業界がどのように貢献できるのかなども、継続して探っていきます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 各社のコロナ対策やフルハーネスの法令動向、作業効率を高める製品が関心を集める
2020年は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、政府が2020年4月に緊急事態宣言を発令し、不要不急の外出を避けることを推奨した結果、各社で在宅勤務が急速に普及しました。建設業界の方々にとっては、テレワークの導入やテレビ会議システムの活用、現場の遠隔監視を実現するソリューションの採用など、従業員が新型コロナウイルスに感染しないための手法について考えさせられた1年になったのではないでしょうか。そんな中、BUILTで2020年に公開された記事の中から、1年間の閲覧ランキングトップ10を紹介します。 - 全国で進む再開発に注目が、フルハーネスなど法令動向にも高い関心が集まる
2019年を振り返りますと、同年8月に発生した大雨や同年10月19日に発生した台風19号などの大規模災害が思い出されます。建設業界の方々にとっては、耐震、耐風を踏まえた設計や施工、BCPを考慮した施設管理にについて考えさせられた1年になったのではないでしょうか。そんな中、BUILTで2019年に公開された記事の中から、1年間の閲覧ランキングトップ10を紹介します。 - 新型コロナの不動産業界への影響を調査、81%が集客減
クラスココンサルファームは、同社の不動産テックを利用する全国の不動産業4000店舗にアンケート調査を行い、新型コロナウイルス感染症への影響などを調べた。 - 安全帯の名称「墜落制止用器具」に、フルハーネスの義務化で
政府は2018年6月8日、労働安全衛生法を改正した施行令を公布し、安全帯の名称を「墜落制止用器具」に変更した。