検索
調査リポート

2021年度の国交省予算案から見る建設市場「民間は大幅減も公共工事が下支え」産業動向

ヒューマンタッチ総研は、独自に分析した2021年度の国土交通省予算案から見る建設市場の動向を公表した。今後の見通しでは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、民間の建設投資は大幅に減少するが、政府建設投資については前年度並みを維持すると予測している。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 人材紹介事業を行うヒューマンタッチが運営するヒューマンタッチ総研は2021年2月2日、2021年度(令和3年度)の国土交通省予算案から見る建設市場の動向をまとめ、リリースした。

■2021年度の公共事業関係費の予算はコロナ禍の中でも堅調

 一般会計における国土交通省の公共事業関係費での予算額の推移をみると、2015年度以降は横ばいで、ほぼ前年度並み予算を確保している(図表1)。また、臨時特別の措置による公共事業関係費、補正予算による公共事業関係費を加えた実質的な公共事業関係費でも、2021年度は第3次補正予算で1兆9342億円が積み増され、総額で7兆1929億円となり、前年度よりも695億円増加している(図表2)。公共事業関係費は全体として、コロナ禍でも落ち込むことなく堅調に推移していると言える。


【図表1 一般会計における国土交通省の公共事業関係費の予算額の推移】 出典:国土交通省「予算決定概要」(各年度版)よりヒューマンタッチ総研が作成

【図表2 臨時特別の措置、補正予算を加えた公共事業関係費の予算額の推移】 出典:国土交通省「予算決定概要」(各年度版)よりヒューマンタッチ総研が作成

■第3次補正で、インフラ老朽化対策などのために大きな予算を確保

 第3次補正予算で、防災・減災、国土強靭化などや将来を見据えたインフラ老朽化対策にどのくらいの予算が確保されたかについてみると、あらゆる関係者により流域全体で行う「流域治水」の推進に3826億円、集中豪雨や火山噴火などに対応した総合的な土砂災害対策の推進に440億円、南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策等の推進に1485億円、密集市街地対策や住宅・建築物の耐震化の促進に19億円、地域における総合的な防災・減災対策、老朽化対策などに対する集中的支援に4246億円、将来を見据えたインフラ老朽化対策の推進に1283億円が投入されており、総額は1兆1299億円に上る(図表3)。

 予算概算要求では、公共事業に関連する「緊要な経費」に係る要望内容として、「激甚化・頻発化する自然災害等に鑑(かんが)み、3カ年緊急対策として講じられてきたこれまでの実績を踏まえ、今後、中長期的に達成すべき安全度の水準を見据えて、これまでの実績を上回る必要かつ十分な規模となるよう、予算編成過程で検討する」とされていたが、その方針通りに第3次補正予算によって防災・減災、国土強靭化などやインフラ老朽化対策に大きな予算が確保されていることが分かる。


【図表3 主な項目の要求額と予算案額の概要】 出典:国土交通省「2021年度予算概算要求概要」「2021年度予算決定概要」よりヒューマンタッチ総研が作成

 ヒューマンタッチ総研所長の高本和幸氏は、「防災・減災及び老朽化した社会インフラ対策については、国にとっての喫緊の重要課題であるという認識にぶれはなく、コロナ対策で財政が逼迫(ひっぱく)する中でも、2021年度の公共事業関係費については補正予算を含め、前年度を若干上回る予算が確保された」。

 一方で「2021年度の建設市場は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う民間設備投資や住宅投資の落ち込みから、民間の建設投資は大幅に減少することが危惧されるが、公共事業を中心とした政府建設投資については、前年度並みをキープして建設市場を底支えするのではないか」と総括する。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る