トンネルや路面の点検向けに8Kカメラを搭載した計測車両を開発、朝日航洋:メンテナンス・レジリエンス OSAKA 2021
朝日航洋は、8Kカメラやレーザー機器、全方位カメラ、GNSSを備えた計測車両「GT-8K」を用いたトンネル点検支援サービスの提供を開始したことを2021年2月16日に発表した。今回のサービスでは、GT-8Kを活用し、トンネル覆工面を撮影して、撮られた映像を基に、朝日航洋が変状図と写真台帳を作り利用者に提供する。
国内では、2012年に山梨県大月市笹子町の中央自動車道上り線笹子トンネルで発生したトンネル天井板崩落事故が象徴するように、インフラの老朽化が社会的なリスクとして顕在化しつつある。加えて、日本に存在する約1万の道路トンネルも老朽化が進行しおり、建設から50年を超えるものが全体の3割に達しようとしており、インフラ構造物に対するメンテナンス技術の高度化と効率化は喫緊の課題となっている。
上記のような状況を踏まえて、朝日航洋は、アストロデザインと共同で、8Kカメラやレーザー機器、全方位カメラ、GNSSを備えた計測車両「GT-8K」を開発した。朝日航洋は、メンテナンスと国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)をテーマに掲げた建設総合展「メンテナンス・レジリエンスOSAKA 2021」(会期:2021年7月14〜16日、インテックス大阪)内の「インフラ検査・維持管理展」でGT-8Kをパネル展示した。
トンネル覆工面にある0.1ミリ以上のひび割れを抽出
GT-8Kは、トヨタ自動車製のピックアップトラック「ハイラックス」に、アストロデザイン製8K映像カメラ「AB-4815」やPGR製全方位カメラ「Ladybug5+」、Applanix製GNSS「POS/LV620」、Z+F製レーザー機器「9012」を搭載したもの。
今回の車両では、取り付けられた複数台の8K映像カメラとGNSSを同期してトンネル覆工面を撮れ、得られた映像をモザイク処理することで、トンネル内を平面に映した展開画像を作れる。さらに、画像から、トンネル覆工面にある0.1ミリ以上のひび割れを抽出し、点検作業の基礎資料として使える。車体には、大型LED照明を5〜10台設置するため、トンネルの暗所や夜間の路面も撮影可能だ。
朝日航洋の担当者は、「8K映像カメラなどの搭載機器は、性能が良いため、車両の走行速度が80キロでも、対象物を撮れる」と話す。
Z+F製レーザー機器の9012では、従来の計測車両で導入していた「測距(Time Of Fight)方式」ではなく、「位相差方式」を採用することで、レーザーでスキャニングできる点群の分解能を向上した。具体的には、これまでの方式では捉えづらかった細かい変状や断面形状なども詳細に測れるにようになり、道路施設点検などで役立つようになった。
「GT-8Kは、設置された8K映像カメラの位置を変更し、トンネル、路面、橋梁(きょうりょう)の床版下面などに適した仕様に変えられる。この換装は1日に完了する」(朝日航洋の担当者)。
搭載機器の仕様
AB-4815の画素数は7680×4320ピクセルで、最大撮影レートは120fps。Ladybug5+の画素数は2048×2464ピクセル×6CMOS。POS/LV620のレーザー照射速度は毎秒101万6000発。9012の最大位置精度は、Xが0.020メートルで、Zが0.05メートル。姿勢精度は、ロール&ピッチが0.05度で、機首真方位は0.015度。
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