高所作業車3台の機能を1台にまとめた「E-マルチ点検車」:メンテナンス・レジリエンス OSAKA 2020
西日本高速道路エンジニアリング中国は、高所作業車3台分の作業台を1台に集約した「E-マルチ点検車」や既設パイプカルバート内部の状況を調べられるロボット「Ex-Mole」を開発した。国内の展示会などで、両製品が点検の省人化や安全性の向上に役立つことをアピールしている。
西日本高速道路エンジニアリング中国は、メンテナンスと国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)をテーマに掲げる総合展示会「メンテナンス・レジリエンス OSAKA 2020」(会期:2020年7月29〜31日、インテックス大阪)内の「インフラ検査・維持管理展2020」に出展し、トンネルでの点検作業を効率化する車両「E-マルチ点検車」とパイプカルバート内部の調査で役立つロボット「Ex-Mole」をPRした。
作業総人数を19人から15人に
現在、トンネル点検は、路面班4チームのスタッフ13人、高所作業車3台の運転手3人、交通監視員3人の計19人で行うケースが多い。だが、供用中のトンネルでの作業は、走行車の騒音などの影響により、それぞれのチームが担当するエリアの境界付近で、各作業車の連携が難しく、トンネル内で発生した変状の見落としが生じる可能性がある。
また、多人数の業務では事前に、交通規制に起因した第三者災害の防止や作業車からの墜落、規制帯からのはみ出しによる接触事故などの安全対策に配慮しなくてはならない。
従来の課題であったトンネル内での作業連携や点検業務の安全性を高めるのが、今展で披露したE-マルチ点検車。E-マルチ点検車は、作業車3台分の作業台を備えており、これまでの点検部位である側壁から天井部までのメンテナンスを1台で進められるため、点検範囲の引き継ぎが不要で、野帳1冊で各部分の状況をまとめられる。
作業台の展開と格納は、動力がいらないため、機械トラブルが発生しにくい。作業台の上下移動は手動ウインチ式で、搭載したサイド歩廊や手すりは可倒式と差し込み式を採用している。最上部の作業台は、左右90度旋回式となっており、トンネル中心の天井まで上昇できる。
E-マルチ点検車を現場に導入することで、従来と比較して、作業車が3台から1台に削減可能なため、交通監視員を3人から1人に、ドライバーを3人から1人に減らせ、作業総人数は19人から15人になり、コストカットにつながる。
西日本高速道路エンジニアリング中国の担当者は、「将来は、海外で運用されている自動運転技術を参考に、車両間隔を常時感知するセンサーを搭載した自動追尾型の後尾警戒車を開発していく。E-マルチ点検車と組み合わせて使用することで、トンネル点検時の事故を未然に防ぐことが可能になる」とコメントした。
Ex-Moleは、取り付けられたカメラや360度レーザースキャナーを用いて、点検が難しい既設パイプカルバート内部の映像やレーザー計測データを取得する。
画像や情報は、専用ビュワーソフトで確かめられる。ロボットの操作方法は、管外から遠隔で行い、管内に堆積する土砂などの障害物を避けて走らせられる。パイプカルバートのサイズは、φ1〜3メートルまで対応している。
ロボットの作業手順は、まずEx-Moleで任意のパイプカルバートを調査した後、専用ビュワーソフトで収集した画像をチェックし内部の損傷を確認する。レーザー計測データは専用ソフトで3次元解析し、点検報告書を作る。
「Ex-Moleは、パイプカルバートの断面変形やボルトナットの腐食、管底の摩耗による漏水の発見に貢献する。前進のみしかできない構造となっているため、出口で回収する必要がある」(西日本高速道路エンジニアリング中国の担当者)。
総力特集:
メンテナンスと国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)に焦点を絞った建設総合展「メンテナンス・レジリエンスOSAKA 2020」が2020年7月29日、インテックス大阪で開幕する。
コロナ禍の中で、ひさびさとなる建設展の開催となった本展では、インフラ検査・維持管理をはじめ、建設資材、防災・減災、i-Construction、労働安全衛生など、最先端の資機材やサービスが一堂に会する。特集ページでは、会場でのブース取材やセミナーレポートで、インフラの最新テクノロジーや市場動向を紹介する。
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