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“笹子トンネル事故を繰り返さない”NEXCOの再発防止策や東芝インフラシステムの新路面点検システム本音のインフラメンテナンス〜体制・組織・人のあり方〜(上)(1/3 ページ)

中日本高速道路(NEXCO中日本)は、2012年12月2日に発生した笹子トンネル天井板落下事故を受け、体制や従業員の育成方法について刷新した。一方、東芝インフラシステムズは路面状況や橋梁床版の内部を見える化するシステムの開発を進めている。

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 インフラメンテナンス国民会議と日本経済新聞は、「社会インフラテック」(2019年12月4〜6日、東京ビッグサイト)で、トークセッション「本音のインフラメンテナンス〜体制・組織・人のあり方」を開催した。

 セッションでは、政策研究大学院大学 教授 家田仁氏がコーディネーターを務め、中日本高速道路(NEXCO中日本) 代表取締役社長CEO 宮池克人氏や玉名市役所 建設部 土木課 橋梁メンテナンス係長 木下義昭氏、国土交通省 総合政策局 公共事業企画調整課長 森戸義貴氏、東芝インフラシステムズ 社会システム事業部参事 熊倉信行氏がパネリストとして登壇し、それぞれの取り組みを紹介した。


トークセッション「本音のインフラメンテナンス〜体制・組織・人のあり方」

安全性向上3カ年計画で総額2450億円を投資


中日本高速道路 代表取締役社長CEO 宮池克人氏

 宮池氏は、「笹子から7年、わが社は何を変えたのか」と題し、2012年12月2日に山梨県大月市笹子町の中央自動車道上り線笹子トンネルで発生した天井板落下事故を機に、策定したトンネル事故再発防止策を説明した。

 笹子トンネル天井板落下事故の発生を受け、国土交通省はトンネル天井板落下事故に関する調査・検討委員会を設立。同委員会は2013年6月18日、落下の発生原因の把握や似たような事故の再発防止策について専門的見地から検討した報告書を作成した。一方、NEXCO中日本は、事故原因を独自に調べ、再発防止に向けた方針を定めた。

 国とNEXCO中日本の調査により、構造物の健全性に対する意識が薄く、目先の仕事に追われ、緊急性のない点検が先送りになっていた問題点が発見された。宮池氏は、「点検や判定などを行っていても、やり方が現場任せで、チェック機能が十分でなかったことやグループ会社間の連携が薄く、NEXCO全体でマネジメントする意識が低かったことも明らかになった」と語った。

 NEXCO中日本は、2013〜2015年度にかけて、トンネル事故再発防止を目的に、企業風土や業務プロセス、安全管理、人材育成、事業計画を刷新するプロジェクト「安全性向上3カ年計画」を打ち出した。3カ年計画では、組織改革や維持管理におけるマネジメントの強化、構造物の安全性を高める事業が進められた。

 組織改革では、高速道路事業の執行機能を支社に集約するとともに、保全担当要員を増員し、現場の体制を強化した。加えて、社長直轄組織として安全管理部を設置。維持管理におけるマネジメントの強化では、点検、判定、補修、記録の業務を再整理し、ルール化した上、各工程の責任者と参加者を明確化し、支社や技術管理部が専門的立場で構造物を照査できる環境を整備した。安全性向上に向けた事業では、トンネル天井板や換気用ダクト類を撤去し、ジェットファンや標識などトンネル上部に配置された構造物は補強した。重要交差箇所のコンクリート剥落(はくらく)対策や橋梁(きょうりょう)補修、点検通路の取り付けなども行った。「安全性向上3カ年計画では、総額2450億円を投資して、安全対策全体を改善した」(宮池氏)。


安全性向上3カ年計画の概要

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