東急建設らが現場の低周波音に有効な軽量防音パネルを開発、約10db以上の遮音効果:山岳トンネル工事
東急建設は、旭機工や松陽産業と共同で、加圧膜を利用した軽量な防音パネル「(仮称)低周波音用・軽量防音パネル」を開発した。同社は現在、トンネル発破掘削工事の防音扉や防音シェルター、住宅に近接するシールドトンネル工事現場(泥水処理用の振動ふるいの防音ハウス)、建設現場と工場に設置された発電機の防音対策などで、低周波音用・軽量防音パネルの導入実績を増やしつつ、都市部で発生するさまざまな騒音対策への活用も視野に展開している。
東急建設は、旭機工や松陽産業と共同で、加圧膜を利用した軽量な防音パネル「(仮称)低周波音用・軽量防音パネル」を開発したことを2021年6月21日に発表した。
1枚当たりの重さは約50キロ
建設現場ではこれまで、発生する低周波音を遮音するために、重く厚いコンクリートパネルを設けてきたが、施工性が悪くコストの負担が大きかった。こうった問題を解消するために、東急建設は、旭機工や松陽産業とともに、低周波音用・軽量防音パネルを開発した。
低周波音用・軽量防音パネルは、加圧膜を利用した軽量遮音構造(Membrane Sound Insulator、MSI)※1と鋼板を組み合わせることで、軽く、低音と高音の広範な音域で音を遮る性能を確保している。軽量遮音構造は、桟(さん)※2を取り付けることで、剛性に依存する遮音領域をチューニングさせることが可能となり、低音域における遮音性能の広帯域化を実現した。
※1 低周波音用・軽量防音パネル:鳥取大学 元教授 西村正治氏が考案した原理で、加圧膜と金網等の剛性材を利用し、軽量な材料構成で剛性を高め、剛性による遮音領域(剛性則領域)を拡張し、軽量ながらも低音域の遮音性能が確保できる機構
※2 桟:戸や板などの板面の片側だけに出ている細長い木を指す
低周波音用・軽量防音パネルの特徴は、重さが1枚(パネルサイズ495×1980ミリ)当たり約50キロで、低周波音対策に従来用いられてきた150ミリ厚のコンクリートパネルと比較して、約6分の1の重さで低周波音をカットする点。
さらに、施工は、従来の防音ハウスや防音壁などと同様に、パネルを落とし込んで取り付ける「落とし込み工法」を採用しているため簡単で、パネルが軽く、揚重機や搬出入時のトラックを小型化でき、運搬時の安全性が高まり、費用も減らせる。
また、東急建設の技術研究所では、低周波音用・軽量防音パネルを配置することで、低周波音(31.5Hz帯域前後)に対して10デシベル(db)程度以上の遮音効果が得られることを確認している。加えて、実現場での有効性をチェックするため、同社のトンネル掘削工事現場に配置された防音扉の一部に低周波音用・軽量防音パネルを試験施工したところ、コンクリートパネルを搭載した部分と同程度の遮音効果があることを確かめた。
現在、東急建設では、工事現場での適用拡大に向けて、技術研究所内にスモールサイズの防音ハウスを試作し、耐候性および施工性の検証を行っている。
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