遮音性と軽量性を兼ね備え建設コストを削減する“CLT”の躯体床を開発
大成建設は、優れた遮音性能を持ちながら軽量性も両立させたCLT(直交集成板)の木造躯体床構造「T-WOOD Silent Floor」を開発した。
大成建設は、優れた遮音性能(重量床衝撃音遮断性能)を持ちながら、軽量性も両立させたCLT(直交集成板)による木造躯体床(以下、CLT躯体床)構造「T-WOOD Silent Floor」を開発した。CLT躯体床の下階には、無機系粒状体(ゼオライト)を敷き詰めた遮音天井、上階には同じく遮音性のある乾式2重床を配置した構造で、コンクリート床に比べ、工期短縮と効果的な遮音対策を実現した。建物重量も低減できることから、躯体・基礎工事の軽減と建設コストの削減も見込める。
軽量性を備えながら、重量床衝撃音を効果的に防ぐ木造躯体床
近年、低炭素社会の実現や国内の林業活性化に向けた国産木材の利用が促される一方、木造躯体床の実用化にはさまざまな課題が生じている。
例えば、建築物の躯体床を木造とした場合には、歩行や飛び跳ねで生じる重量床衝撃音を低減することは難しいとされていた。従来は、躯体床上にコンクリートを打設することで、床全体の重量と剛性を高め、遮音性を向上させる手法も用いられてきたが、木造の軽量性を損なう上に、コンクリートの養生期間を設定する必要があるため、工期が長くなるなどのデメリットがあった。
今回開発したT-WOOD Silent Floorは、木造建築の軽量性を備えながら、特殊な構造により、重量床衝撃音を効果的に防ぐ。他にも、CLT躯体床の上下階に採用した遮音天井や乾式2重床は単体でも十分な防音性能を持ち、組み合わせることでより効果的な対策につながる。
また、乾式2重床とCLT躯体床、CLT躯体床と遮音天井のそれぞれの間に空気層が密閉されている際には、振動音が増幅してしまう「太鼓現象」が発生するが、それを予防するため、空気層を密閉しない構造を採用している。
性能実証試験の結果、一般的な住宅やホテルなどの居住空間で求められる重量衝撃音の遮音等級(LH-55)と同程度の性能が確認されている。試験では、1時間耐火を想定した厚さ150ミリのCLT躯体床遮音天井と乾式2重床を組み合わせて実施。構成の総重量は1メートルあたり213キロとなり、コンクリート床に換算すると、90ミリ相当の厚さとなる。
大成建設では「建物内の水回りを除き、その他はコンクリート床との置き換え可能な部分が多いと思われるため、コンクリの養生期間などを考慮すると、工期短縮が期待できる。実物件への適用はこれからだが、適用可能かどうか検討段階のものは既にあり、年間5件程度に適用していく」と話す。
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