乾式2重床の木造最高レベル遮音システム、軽量で施工も容易:新建材
東急建設、ナイス、淡路技建は外販も視野に入れ、中高層木造建築物を対象にした乾式2重床の遮音システムを開発した。従来床材に比べ、各部材が軽量のため木材の良さを生かせ、施工時にも特殊な部材や重機が要らず、コストを抑えることができる。
東急建設、ナイス、淡路技建の3社は2020年4月13日、床衝撃音遮断性能の確保が難しいとされてきた木質系建築に適用できる高遮音2重床システム「(仮称)高遮音床システム」を共同で開発したことを発表した。
木造建築最高レベル「LH-50」を達成した高遮音床システム
木造やCLTなどの木質系建築物では、重厚化や防振装置によって床の遮音対策を講じることがある。しかし、材料費や施工手間の増加に伴い、コストが上昇するだけでなく、建物自重が増加するため耐震性に悪影響を及ぼすことが懸念されていた。
3社が開発した2重床システムは、木製床板の振動特性に着目した遮音機構を採用し、重量アップや特殊な部材を使用することなく、木造建築最高レベルとなる衝撃音の遮断性能「LH-50」を実現した。
2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されて以後、規格流通材を利用した中規模木造建築、S・RC造と木造の混構造による中高層木造建築などが積極的に検討されている。これに伴い、木造建築物に要求される遮音性能も、RC造と同程度に高まっている。
新システムは、防振支持脚と2重床床板の振動特性に着目し、両者を最適な組み合せに調節することで、床衝撃時の振動(騒音)を効果的に低減できる条件を明らかにして製品化。最大の特徴は、特殊な材料を用いることなく、正方形状の(スクエア形)パーティクルボードと防振支持脚を組み合せ、「軽量化」と「高遮音化」を両立させた。これにより、木造建築物の良さとなっている軽量さを生かしつつ、対策が難しい重量床の衝撃音に対し、LH-50を達成した。
システムのラインアップは、フローリング材と天井材の種類により、床衝撃音遮断性能が異なる2タイプ(標準タイプ/高性能タイプ)。要求性能に適したタイプを提案することが可能になるため、コスト面でも、より合理化が図れる。
従来の遮音対策は、高密度の板状材を介在させていたことから、重量が過大化する傾向にあったが、2重床はパーティクルボードと合板で構成することで、50キロ毎平方メートル以下に抑えられる。
一方で床の防振性能(遮音性能)を高めると、床面が過度に柔らかくなり、「床鳴り」や「歩行感を損なう」といった問題が起きる原因となっている。その点、2重床では、床鳴り防止用緩衝材の挿入や捨張合板で床面剛性の調整を行い、高い防振性能(遮音性能)を維持しつつ、床鳴りの防止と良好な歩行感を可能にした。
また、施工面では、乾式工法かつ各部材が軽量であるため重機が不要で、取り付け時にも躯体へアンカー打ちや特殊な治具も不要なため、設置するのが容易となっている。
今後3社は、主に中規模の共同住宅、学校、高齢者施設、保育施設、商業施設などといった非住宅の中規模木造建築物、高い遮音性能が要求される中高層木造建築物を対象に、東急建設とナイスはそれぞれの設計・施工案件で提案していく。とくに、東急建設の住宅「moc+comfort」、ナイスの「パワーホーム」といった木造3階建ての賃貸共同住宅への採用を計画しているという。さらに淡路技建を介しての外販も検討している。
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