BIMで遮音設計を自動化、竹中工務店が音響を可視化する新手法:BIM/CAD
竹中工務店はBIMモデルを活用した遮音設計の自動化手法を開発。設計の初期段階から効率的に遮音品質を確保できるという。今後はAIを活用したより高度な自動化にも取り組む計画だ。
竹中工務店は2017年10月、BIMを活用した3次元設計において、建築設計図の作成過程で遮音設計を自動的に行う手法を開発したと発表した。同社の音響設計グループとBIM建築設計グループが共同開発したもので、遮音品質を効率的に確保することができるという。実際に、「国立循環器病研究センター」(大阪府吹田市)の移転工事に適用した。
これまでの一般的な遮音設計では、建築設計者がレイアウトしたプランに対し、音響技術者が図面を見ながら壁や床の必要遮音性能を設定していた。一方、今回開発した新手法では、事前にBIMデータに音響情報を組み込むことで、建築設計者自らが必要な遮音性能を分かりやすく定量的に把握しながら設計を進められるようにしているのが特徴だ。
具体的には、各室が必要とする静けさを示す「室内騒音目標レベル」や、発生音の大きさを示す「発生音レベル」といった音響特性を、BIMの属性情報として入力する。すると、3Dモデル上に音響グレード別に色分された居室が表示される。さらに、各部屋の配置関係に基づき、隣室間や上下間に必要な遮音性能の計算が自動的に行われ、事前にグレード別に設定した必要遮音構造を選定できるようになっている。
音響性能のグレードごとに色分けが行われるため、かなりの静けさが求められる重要室の周辺に、大きな音を発生する機械室などが隣接しているといった状況を一目で把握できるというメリットもある。基本設計の初期段階から音響リスクがあるレイアウト避けやすくなり、2次元CADでは見落としやすい複雑な立体空間に対しても、遮音品質を確保し、遮音上有利なレイアウトを提示しやすくなる。
コスト面でもメリットがあるという。BIMモデルは建築材料の仕様を入力すると、建築面積の数量算出機能から積算情報が得られる。開発した手法ではレイアウトに伴い自動設定された遮音性能から遮音構造が決まり、同時に建築コストが算出されるようになっている。このようにBIMデータを連携させ、レイアウトごとにリアルタイムにコストの比較が可能になることで、複雑な遮音計画においても音響品質を保ったままレイアウトの合理化が図れるとともに、設計の早い段階で建設コストを削減しやすくなる。
竹中工務店では今後、この手法に人工知能(AI)の活用も進めていく方針だ。既にAIによって、建物のレイアウト遮音品質、構造、設備、建設コストなどを統合した最適解が自動設定されるようなシステムの開発に着手しているという。
今後は開発した手法を医療施設だけでなく、複合商業施設、学校施設、ホテル、工場などのさまざまな用途に拡大していく方針だ。
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