大成建設が低コストで重量床の衝撃音を低減する技術を開発、4〜6dBの静音性アップ:防音
大成建設は低コストで重量床の衝撃音を低減する技術「T-Silent Plus」を開発した。今後、同社は、集合住宅やホテルなど、重量床衝撃音の低減や遮音など幅広い対策が要求される新築・改修の建物に対して今回の技術を提案する。
大成建設は、床仕上げの高さを変更することなく、乾式二重床と床スラブ間の床下空間にグラスウールを十字に敷設し、低コストで重量床の衝撃音を低減する技術「T-Silent Plus」を開発したことを2021年3月18日に発表した。
重量床衝撃音遮断性能の等級を1ランク向上
集合住宅では、床仕上げ材に使用される乾式二重床で、子供の飛び跳ねなどで発生する重量床衝撃音が増幅し、騒音問題となるケースが増えている。これまで重量床衝撃音の増幅は、乾式二重床の部材振動による共振現象が原因と考えられており、板材を重量化することで揺れを低減し、共振の影響を受けにくくする対策が取られてきた。
しかし、大成建設では、調査により、乾式二重床での部材振動の他に、板材と床スラブに挟まれた床下空間で生じる音の共鳴現象が重量床衝撃音増幅の原因となっていることを明らかにした。そこで、同社は、音により空気が激しく振動する部分に、空気振動を抑制する通気抵抗材としてグラスウールを敷設することで、床下空間内の共鳴を抑えられるT-Silent Plusを開発した。
T-Silent Plusは、居室の規模に応じて、最小限のグラスウールを敷設するだけの工事で、専門的な施工技術は不要な他、敷設時に床仕上げ高さを変更することなく、新築・改修の設計、施工のどの段階でも適用可能で、コストアップがほとんどない。
また、板材を重ねて重量化した従来の対策を施した乾式二重床との併用により、さらに重量床衝撃音の低減を図れ、乾式二重床だけでなく、二重天井と天井スラブ間の空間内にも同様に適用する。
大成建設の床衝撃音実験施設と公的試験所での性能評価試験では、T-Silent Plusの適用により、4〜6デシベルの性能向上(63ヘルツ帯域における低減効果※1)が確認され、重量床衝撃音遮断性能の等級を1ランク向上させられることが判明している。
※1 63ヘルツ帯域における低減効果:建築物の重量床衝撃音遮断性能に関して、JIS規格では人間の聴感に影響を及ぼす周波数帯域として63ヘルツから500ヘルツ帯域が評価対象となっているが、この中では低周波数帯域である63ヘルツ帯域が最も遮断しにくく、この帯域での重量床衝撃音の低減が重要となる。重量床衝撃音遮断性能が5デシベル程度削減されると等級が1ランク向上する
なお、今回の技術を一般的な集合住宅の居室(一辺が3〜4メートル程度)に適用する場合は、居室の床下空間に一辺を二分割するようにグラスウールを十字に敷設することで低減効果を発揮することが分かっている。
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