ドローン自動飛行による港湾クレーン点検技術を確立、三井E&Sマシナリーら:検査
三井E&Sマシナリーとゼンリンデータコムはドローンの自動飛行による港湾クレーン点検技術を確立した。今後、両社は、今回開発した港湾クレーン点検技術の検査精度を向上するとともに、作業の効率化や安全性のアップを実現し、実用化を推進する。
三井E&Sマシナリーとゼンリンデータコムはドローンの自動飛行による港湾クレーン点検技術を確立したことを2021年5月31日に発表した。
対象クレーンの3Dモデルと撮影画像をリンクさせて表示することが
ドローンの自動飛行による港湾クレーン点検技術は、これまで専門的な技術を持つ技術者が目視で行っていた港湾クレーン点検の一部をドローンの自動飛行による画像撮影で置き換える。さらに、専用のシステムによる管理や画像のAI解析で定量評価を行え、効率的な港湾クレーンの運用管理が可能となる。
点検技術の作業手順は、まず港湾クレーンの3D-CADモデルを用いて、点検対象部分に対するドローンの撮影位置やカメラアングルなどをCG画面上で事前に細かく設定する。続いて、あらかじめ設定した飛行ルートに沿って、ドローンを自動飛行させ対象物を撮る。次に、RTK※1 補正情報を用いて高精度に位置を制御することで操縦者の飛行スキルに依存しない安定した撮影ができ、大量の画像を短時間で効率良く取得する。
※1 RTK:「Real Time Kinematic(リアルタイムキネマティック)」の省略形で、「相対測位」と呼ばれる測定方法の1つ。固定局と移動局の間で情報をやりとりすることで、精度の高い位置情報を得られる
また、専用システムの撮影画像自動振り分け機能や両社で共同研究中の錆定量評価アルゴリズムによるスコアリングを用いてクラウドで得られた画像などを一元管理する。
特徴は、対象クレーンの3Dモデルと撮影画像をリンクさせて表示することを実現し、点検結果がクレーンのどこの部分かを確かめられる。加えて、ドローンの自動飛行で、定点カメラのような同画角の画像が得られるため、過去画像との比較が容易になり、経年変化のチェックがしやすくなる。
今回の点検管理技術は、三井E&Sマシナリーが開発した港湾クレーンの次世代遠隔モニタリングシステム「CARMS」とも連携する。CARMSは港湾クレーンの状態を場所や時間を問わず見える化する遠隔モニタリングシステム。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 球体ガードやパノラマカメラ2台を搭載したドローンによる点検サービス
エイテックは、球体ガードとパノラマカメラを組み合わせたドローン点検手法を確立し、2種類のサービスを展開している。 - 東電×ゼンリン×楽天が構想する鉄塔の“ドローンハイウェイ”を使った「個配サービス」
東京電力ベンチャーズとゼンリンはドローンの飛行ルート整備「ドローンハイウェイ構想」を掲げ、2017年から既存の電力設備インフラと3次元地図を組み合わせた取り組みを進めている。今回、ここにドローンを使った個人住宅への配送サービスを目指す楽天が加わり、2020年のドローン物流実現に向け、3社共同で実証実験を行った。 - 「次に来るのは“大脳積んだドローン”」UAV開発の先駆者・野波健蔵氏の講演から探る
日本ドローンコンソーシアム(JDC)の野波健蔵会長(千葉大学名誉教授)は、「第5回国際ドローン展」で特別講演を行った。野波会長は、1998年から完全自律型ドローンのマルチコプター(UAV)開発に携わり、大学発ベンチャー自律制御システム研究所(ACSL)を立ち上げるなど、国内におけるドローン界の第一人者。これからのドローンには何が必要か、また、土木・建築領域で活用が拡大していくにはどんなことが壁になるのかを野波会長の講演から読み解く。 - 「夜間飛行」が実現するNEDOが開発を進めるインフラ点検に適した小型ドローン
新エネルギー・産業技術総合開発機構や自律制御システム研究所などは、経済産業省が支援する「安全安心なドローン基盤技術開発」事業で、インフラ点検に適したドローンの開発を進めている。 - “空の道”の整備進む、ドローン37台を運行管理システムに相互接続
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」を推進している。この計画では、インフラ点検などの分野で活用できる無人航空機やロボットの開発、社会実装するためのシステム構築および飛行試験などを実施。物流ドローンが都市部で安全に使える環境の整備を目指している。2019年10月23〜24日、福島県南相馬市の「福島ロボットテストフィールド」で行われた運行管理システムの相互接続試験では、一般事業者のドローンとつなげることを成し遂げ、ドローンを危険なく扱える土壌をさらに整えた。