東電×ゼンリン×楽天が構想する鉄塔の“ドローンハイウェイ”を使った「個配サービス」(1/2 ページ)
東京電力ベンチャーズとゼンリンはドローンの飛行ルート整備「ドローンハイウェイ構想」を掲げ、2017年から既存の電力設備インフラと3次元地図を組み合わせた取り組みを進めている。今回、ここにドローンを使った個人住宅への配送サービスを目指す楽天が加わり、2020年のドローン物流実現に向け、3社共同で実証実験を行った。
東京電力ベンチャーズとゼンリン、楽天の3社は2018年7月12日、ドローンハイウェイを活用したドローン物流の共同検討を開始し、実証実験に成功したことを発表した。
秩父市で、山間部の鉄塔沿いを3kmのハイウェイに見立てドローン宅配
東電とゼンリンが目標とする「ドローンハイウェイ構想」は、ドローンの飛行ルートをインフラ側から支援するもので、政府が示す「空の産業革命に向けたロードマップ2018」にも記載され、高い注目を集めている概念。安全飛行インフラの構築実現に向け、2017年3月29日には、送電鉄塔5万基、送電線の長さにして1万5000km(キロ)を保有する東京電力グループの東京電力ベンチャーズと、日本全国の住宅地図データを持つゼンリンが業務提携を結んでいる。
東京電力グループが保有する送電鉄塔、送電線などのインフラデータと、ゼンリンが開発している「空の3次元地図」を融合させることで、ドローンの高速道路ともいえる“安全・安心な空の道”が実現する。2018年度中には関東に複数のテストコースを開設するという。
実証実験では、ドローンの配送サービスに取り組む楽天が、メンバーに加わり、2018年6月27日に埼玉県秩父市で第1回目となる共同実証実験を行った。使用したドローンは、完全自立制御タイプで、自律制御システム研究所と楽天が共同開発した国産の機体。
飛行ルートは、山間部に連続して設置されている送電鉄塔「安曇幹線」の連なりをドローン専用の高速道路に見立て、ゼンリンの3次元地図を用い、鉄塔に沿ったルートを作成。設備に接触が予想される範囲は、鉄塔を撮影・計測して点群データ化し、地図上に反映。境界線で囲まれた仮想上の危険区域「ジオフェンス」として設定した。コースの総延長は3km(キロ)で、高低差は300m(メートル)。ルート上には「浦山ダム」と「秩父さくら湖」があり、横断する必要があった。
安全な飛行を可能にするため、鉄塔には「気象観測センサー」と、大気中のエアロゾル(ちり、微粒子)から風向き・風速を計測する「ドップラーライダー」を備え付け、飛行をサポート。気象条件に応じて自動で飛行制御する仕組みで、風速毎秒10m超えを検知した場合は、機体はその場でホバリングしつつ退避行動をとる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.