角形鋼管柱継手の溶接を効率化するロボ、1日当たり最大約160mの溶接が可能:ロボット
大和ハウス工業は、角形鋼管柱継手の溶接を効率化するために、フジタと十一屋工業と共同で、角形鋼管柱の施工現場用溶接ロボットシステム「SWAN」を開発した。
大和ハウス工業は、フジタと十一屋工業と共同で、角形鋼管柱の施工現場用溶接ロボットシステム「SWAN(スワン)」を開発したことを2021年5月21日に発表した。
熱中症リスクの軽減に貢献
建設業では人手不足と技能者の高齢化が深刻化している。国土交通省が2019年10月に公表した「建設業界の現状とこれまでの取組」によれば、建設業就業者の3割超が55歳以上である一方、30歳未満は約1割にとどまっている。
そこで、大和ハウス工業とフジタでは、人手が足らない状況を改善する策の1つとして、角形鋼管柱継手の溶接※1効率向上や作業負荷軽減を図れるSWANを開発した。
※1 角形鋼管柱継手の溶接:正方形や長方形の中空鋼材をつなぎ合わせる作業のこと
SWANは、角形鋼管柱継手の溶接効率を最大2倍まで向上するロボットシステム。具体的には、溶接技能者1人と作業補助員1人から成る作業班が角形鋼管柱に対して2台のロボット(1セット)を対向配置して、4台のロボットを運用する。さらに、市販のダイヘン製汎用6軸多関節型ロボットアームを組み込み、溶接技能者の作業を再現しつつ1日当たり最大約160メートルの溶接※2を果たす。対象となる角形鋼管柱は柱径550〜900ミリで、板厚は22〜40ミリ。
※2 最大約160メートルの溶接:隅肉溶接脚長6ミリとして換算。1セットのロボットで1日当たり約80メートルを溶接可能
また、柱の溶接作業は、高温となる溶接部に近接して長時間作業を行うため、溶接技能者の作業負荷は大きく、かつ、夏場の熱中症リスクが高かかったが、SWANを導入することで、溶接技能者は品質の確認やロボットシステムの管理に集中でき、作業負担や熱中症のリスクを減らせる。大和ハウス工業とフジタは、既にSWANを現場で適用し良好な溶接品質を確認している。
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