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自律型ロボットが活躍する新世代の建築生産システム、建設現場のロボ開発最前線Autodesk University Japan 2019(1/4 ページ)

1804年に創業した大手建設会社の清水建設。戦前から研究開発にも注力してきた同社は、1944年に技術研究所を設置し、建設技術の進歩をリードしてきた。「10年後を準備する」をキーワードに現在ではロボットやAIを活用した生産革新にも取り組んでいる。

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 オートデスクは2019年12月8〜9日、建築や土木などのユーザー事例や最新ソリューションを紹介するプライベートイベント「Autodesk University Japan 2019」をグランドニッコー東京 台場で開催した。2日目のタイムテーブルのうち、清水建設が、「自律型ロボットが活躍する新世代の建築生産システム」と題し、ロボットと人が建設現場で協働する建築生産システムの将来ビジョンについて解説したセッションを採り上げる。

 登壇者は、生産技術本部 常務執行役員 本部長の印藤正裕氏。印藤氏は、建設業界を取り巻く現状を俯瞰しながら、生産システムの在り方に対する考え方や現在着手しているイノベーションについて、実例を交えプレゼンテーションした。

生産性向上に向けたロボット開発に着手


清水建設 生産技術本部 常務執行役員 本部長の印藤正裕氏

 清水建設は、全国に90カ所の拠点を持つ大手スーパーゼネコン。従業員数は1万714人で、連結売上高は1兆6649億円(2018年度)に上る。印藤氏は現在、現場の技術的・品質的な支援を行う部署にいるが、もともとは現場監督を務めていたという。シンガポール・チャンギ空港第3ターミナルの工事が最後の現場だった。

 同社がロボット開発に着手したのは2016年。これまで1992年の時点で84兆円あった建設投資額が、2010年には約半分の42兆円に減少。3Kと呼ばれるイメージも相まって、職人の高齢化率が上昇し、反対に若齢者の入職率は下がっていったことが要因だ。

 今後もこの流れは加速し、日本建設業連合会(日建連)が公表した試算では、建設技能労働者は2014年の340万人から、2025年には128万人が減り、216万人になると予測。この減少化を食い止めるために、現在の10%程度(35万人相当)の省人化を図っていきたいというのが日建連の考えだ。

 また、政府は2016年の「未来投資会議」で、2025年までに20%の生産性向上を目標に掲げた。「日建連の10%と“働き方改革”による10%をプラスすることで、政府が全体目標とする20%の生産性向上を達成し、現状の打開を目指すと解釈している。2016年は、国土交通省がi-Constructionを初導入した生産性革命元年と言われた。前進の年(2017年)、深化の年(2018年)を経て、2019年は“貫徹の年”となっている。この動向に併せる形で、ロボット開発に着手したのが始まりだ」(印藤氏)。

失敗と現場の声から学んだ人とロボットが協業する将来像

 実は清水建設は、40年ほど前に溶接ロボットや天井貼りロボットなどを現場で活用しようとしていた歴史がある。だが、現場の職人たちからの抵抗感をはじめめ、簡単な作業しかできないことに加え、数100キロもある躯体を人が運ばなければ使えなかったことから、次第に技術が活用されなくなったという苦い経験がある。「現場を工場のようにという構想で、スマートシステムを構築したが、2カ所の現場で使用したきり、使われなくなった」。


清水建設のロボット開発の歩み

 転機が訪れたのは2014年。東京大学が主催したデジタルファブリケーションラボというプロジェクトで、スイス連邦工科大学チューリッヒのマティアス・コーラ教授に出会った。2015年11月にコーラ教授の研究所を見学し、ロボット技術の進化を目の当たりにし、印藤氏は「マティアス教授の研究を見て、これは期待できると実感した」と述懐する。

 帰国後、早速ロボット開発に向けた企画書を作成。現場の職人たちに聞き取ったロボット化に対する意識や要望などの調査報告をもとに、“ShimizSmartSite”と称したキャッチフレーズを考案。「調査報告をみると、ネガティブな意見がある一方で、データーベースとの結び付きや自律して働くロボットと人が協働することに対して、期待値が高いことが判明した。現場での管理は、iPadやiPhoneで簡単に操作できる仕組みとし、現場の作業員がともに働きたいと思えるようなデザインであることも考えた」。


清水建設のヒアリング結果

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