日立建機が溶接ノウハウを定量的にデータ化、次世代への技能伝承を実現:技能伝承
日立建機は、建機製造における熟練技能者の溶接技能を若手に伝承するため、複雑な作業を定量的なデータで見える化する計測技術を開発した。今後、溶接現場で実証を行い、計測したデータを基に、若年技術者に技能を伝承する訓練システムの構築も進め、溶接技能の効果的な習得や習得レベルの個人差解消を目指す。
日立建機は2020年4月20日、次世代への技能伝承を目的に、溶接作業を定量的なデータとして見える化する計測技術を開発したことを明らかにした。2020年度から、新しい計測技術を活用して、溶接技能教育のための訓練システム開発に向けた実証実験をスタートさせる。
訓練システム構築で習得技能の個人差を解消
これまで建設機械の主要部品は、鉄同士を溶接した製缶構造物の比率が高く、品質の安定化と生産性向上の観点から、溶接ロボットを用いた自動化が積極的に進められてきた。
しかし、構造物の用途や負荷条件を踏まえた溶接方法の検討をはじめ、強度を保つための仕上げ・補修などの工程では、目視での判断を含め、人の手による高度な技術が欠かせないものとなっている。だが、熟練技能者の高齢化や人手不足などの要因で、若手技能者への技能伝承は課題となっている。
現在、日立建機グループでの技能教育では、若手技能者は教官としての熟練技能者の模範作業を実際に見て模倣することからはじまり、訓練を積み重ね、溶接技能を習得しているという。しかし、溶接作業は複雑で繊細な動作も多く、作業者の経験や感覚に左右されることも少なくないため、習得する技能に個人差が生じることがある。
そこで、日立建機は日立製作所 研究開発グループの協力の下、溶接作業の過程を定量的なデータで見える化する計測技術を開発。2020年4月から、若手技能者と熟練技能者の技能を比較しながら、より効果的な技能教育を行うための訓練システムを実用化すべく、実証実験を行う。
実験の具体的な内容は、土浦工場と常陸那珂臨港工場の熟練技能者と、国内拠点の若手技能者(約20人)を対象に、溶接作業中の視線、溶接トーチを動かす速度や電流・電圧などの諸条件及び溶接部の状態を複数のカメラやモーションキャプチャーで測定し、定量的なデータ化を試みる。計測したデータは、溶接の仕上がりや品質の相関性を解析し、日立建機の品質基準に基づき、適正な溶接条件や動作を新たな基準として定める。
また、新たに定めた基準と、若手技能者の溶接作業を比較できる訓練システムの検討も行う。訓練システムにより、若手技能者は、視覚的かつ定量的な情報をベースに自身の改善点を把握できるようになると期待されている。教官にとっても、若手技能者のデータに即して具体的な指導ができるため、双方が同じイメージを共有した上で効果的な訓練が実現する。
将来的には、海外を含む各製造拠点での技能訓練カリキュラムに訓練システムを採り入れ、人財育成のさらなる充実を図る。さらに、技能訓練のみならず、製造現場におけるさまざまな状況下で計測されたビッグデータを、日立グループの先進的なデジタル技術を活用したソリューション「Lumada」で解析することで、グローバルでの製造品質の維持や改善、生産性の向上を目標に掲げている。
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