鹿島が視認できない超狭開先に対応した“溶接ロボ”を現場適用:ロボット
鹿島建設は、ロボット導入やBIMを基軸とした生産プロセスのデジタル化、遠隔管理技術によって、建築生産プロセスの変革を目指す「鹿島スマート生産ビジョン」の一環で、超狭開先の現場に対応した溶接ロボットを開発した。
鹿島建設は2021年4月13日、これまで培ってきたロボット溶接のノウハウを最大限に活用し、人では困難な超狭開先(開先角度0〜5度)を対象とした現場溶接ロボット工法を実用化したと明らかにした。
既に実工事へ適用し、通常開先(開先角度35度)を対象とするロボット溶接工法と比べ、溶接歪(ゆが)みを40〜70%に抑制し、1日あたりの溶接箇所を10%程度増やせることが証明された。
通常開先と比べて溶接断面を30〜70%削減、コスト低減に
鉄骨造建物の建設工事で、柱や梁(はり)の一般的な現場溶接では、接合部は35度の開先角度となる。この角度を小さくしていくことで、溶接の断面積が減少し、作業時間の削減による生産性向上やコスト低減、溶接熱の減少による溶接品質の向上、使用するCO2ガスや電力の使用量低減による環境負荷軽減が期待できる。
しかし、開先を狭めた狭開先(開先角度25〜30度)の溶接工法では、断面積を10〜20%程度削れるため、生産性向上やコスト低減のメリットが得られる反面、溶接の難易度が上がり、品質確保が難しくなるなどの課題があった。
今回開発した超狭開先ロボット溶接の工法は、これまで蓄積してきた知見や開先形状のセンシング機能、安定した溶接施工能力を最大限に活用することで、ほぼ平行ともいえる超狭開先(開先角度0〜5度)を対象とした画期的な現場ロボット溶接工法となる。
溶接技術は、JFEスチールの協力を得て、溶接に伴うスパッタやヒュームの発生量が少なく、安定した深溶け込みが得られるJ-STARR溶接技術を採用。J-STAR溶接技術と先端曲がりチップで、ほぼ平行開先(開先角度0〜5度)を1層2パスで積み上げて溶接できる。また、人では視認できない程に狭い開先内を安定的かつ着実に溶接し、通常開先と比べて溶接断面を30〜70%カットするため、板厚が厚くなるほど溶接時間を減らすことが可能となり、生産性の改善とコスト低減の効果を発揮する。
さらに、溶接の熱に伴う部材の縮みや変形も抑制し、溶接時の温度管理が効率化するとともに高い施工品質も維持される。加えて、溶接断面低減とJ-STAR溶接技術によって、CO2ガスやヒュームの発生量を抑え、環境と作業員への負荷の軽減にもつながる。
実工事への適用では、首都圏で建設中のオフィスビル6フロアで、梁上フランジの下向溶接358カ所に用いた。その結果、通常開先と比較して、溶接歪みを40〜70%抑え、1日あたりの溶接箇所数は約10%増加し、品質面と溶接効率双方の向上がもたらされたという。
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