大林組がコンクリート受入検査システムにブロックチェーンを活用、改ざんを可視化:ブロックチェーン
大林組は、コンクリート受入検査システムのデータを改ざんできないようにする「検査履歴管理システム」を開発し、実証実験を行っている。今後、同社は、今回の実証実験で、コンクリート受入検査システムを対象とした検査履歴管理システムの有効性を確認し、将来的には建設現場内に設けられたさまざまなシステムのブロックチェーンと連携することを検討している。さらに、協力会社との取引でも納品や返却などの情報を共有化し、突合作業を簡素化するなど現場業務の平準化を目指す。
大林組は、digglueと協力し、建設現場で利用するコンクリート受入検査システムの検査データをブロックチェーン※1上に記録する「検査履歴管理システム」を開発したことを2020年12月に発表し、検査履歴管理システムの実証実験を進めている。
※1 ブロックチェーン:「ブロック」と呼ばれるデータの単位を生成し、鎖(チェーン)のように連結してデータを時系列に保管するデータベースの技術
改ざんが発生したタイミングを特定可能に
近年、安全や環境への関心の高まりに伴い、他産業でトレーサビリティーの取り組みが増える中、建設業では施工プロセスのさらなる透明性の確保が課題となっていた。そこで、大林組は、改ざんを防止・検知する機能をコンクリート受入検査システムに実装した。
しかし、システムは、脆弱(ぜいじゃく)性を突かれ、外部からの攻撃によりデータを改ざんされるリスクがあった。解決策として、同社は、ブロックチェーンの仕組みを利用し、コンクリート受入検査システムのデータを改ざんできないようにする検査履歴管理システムを開発した。
検査履歴管理システムは、建設現場でコンクリートを受け取る際にコンクリート受入検査システムへ測定値や写真などのデータを記録し、専用のデータベースにアップロードする。同時に、データのハッシュ値※2をブロックチェーンに書き込む。そして、コンクリート受入検査システムのデータから再作成したハッシュ値とブロックチェーン上のハッシュ値を突合(とつごう)し、一致すれば改ざんがないことを証明可能。
一致しなかった場合には、検査履歴管理システム上に記録された変更履歴とブロックチェーン上のハッシュ値を照らし合わせることで、改ざんが発生したタイミングが明らかになるため、検査履歴の透明性を高められる。
※2 ハッシュ値:あるデータを変換して得られる同じ桁数のデータ。データを一方向にしか演算できないのが特徴で、ハッシュ値から元のデータを復元することはほぼ不可能。また元のデータを1文字でも変更するとハッシュ値は全く違う結果となり、改ざんが行われると瞬時に判別することができる
【訂正】初出時、記事内容に誤りがありました。上記記事はすでに訂正済みです(2021年6月7日17時22分)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 鴻池組が開発した生コン品質を保つ計測システム、茨城県の庁舎に初適用
鴻池組は、生コンクリートのフレッシュ性状を確認・管理できる「プローブシステム」を茨城県で施工している庁舎建築工事の上部躯体コンクリート工全体に初適用した。 - 計測時間を半減する床コンクリートの“ひび割れ”検出ロボ、結果をCADデータで出力
熊谷組は、自動走行して建物の床面を写真撮影し、床コンクリートのひび割れなどを自動検出するロボットを開発した。1人で広範囲にわたる計測が可能になるだけでなく、計測員の肉体的負担の軽減や検査時間の短縮がもたらされることが見込まれる。 - コンクリート工事の現場管理を省力化、西松建設が業務支援システム
西松建設は、コンクリート工事の施工管理業務支援システム「NCHyper」をハイパーエンジニアリングと共同開発した。工事データのクラウド上で一元管理、各書類への自動転記、電子印の活用により現場管理業務を省力化する。 - PCaの施工品質検査で必要な図面情報をスマホで確認可能な新システム、長谷工
長谷工コーポレーションは、プレキャストコンクリートで躯体を組み立てる「PCa工法」で、PCaの施工品質を検査する際に、タブレットやスマホで図面の情報を確かめられるシステムを開発した。今後は、躯体や設備、電気の工事で求められる品質検査に使えるように改良する。 - PC製道路橋の残存緊張力を無傷で繰り返し測れる新手法、飛島建設ら
飛島建設は、東京理科大学や高速道路総合技術研究所、東電設計と共同で、「表面ひずみ法によるPC鋼材残存緊張の推定手法」を開発した。新手法は、PC製道路橋を傷つけることなく、特定の部分に対し繰り返して圧縮応力を推量可能で、PC鋼材の引っ張り力が低下する状態を調べて、経年劣化も確かめられる。 - 三菱電機が「AI配筋検査システム」提供開始、配筋検査を省力化
三菱電機は、独自のAI技術「Maisart(マイサート)」を活用し、コンクリート構造物の配筋検査を支援する「AI配筋検査システム」を開発、2021年2月3日より提供を開始した。配筋検査の省力化を通じて建設現場の生産性向上する。