鴻池組が開発した生コン品質を保つ計測システム、茨城県の庁舎に初適用
鴻池組は、生コンクリートのフレッシュ性状を確認・管理できる「プローブシステム」を茨城県で施工している庁舎建築工事の上部躯体コンクリート工全体に初適用した。
鴻池組は、生コンクリートのアジテータ車(ミキサー車)に計測装置(プローブ)を導入し、測定したコンクリート温度および積載量から、状態を確認・管理する「プローブシステム」を関東地方整備局発注の「土浦労働総合庁舎(16)建築工事」に初適用した。
アジテータ車全車両に導入、高品質な躯体施工が実現
これまで、生コン運搬に用いるアジテータ車の一部には試験的に導入されていたが、全てのアジテータ車に設置して品質管理を行ったのは今回が初の試み。プローブシステムの適用により、安定したフレッシュ性状を確保できるため、高品質な躯体施工が可能になる。
プローブシステムは、ひずみ計および温度計が内蔵されたプローブを点検口からアジテータ車のドラム内に取り付ける。ドラムの回転に伴い、生コンクリートを通過する際のプローブへの圧力から、スランプやコンクリート温度を測定する。
通常、生コンの品質管理は、工場から出荷された生コンを現場到着後に、仕様書などで定められた頻度で抜き取り検査を実施し、車両単位でスランプなどのフレッシュ性状を確認している。
鴻池組のシステムでは、生コン試料を採取することなくドラム内に積載した状態で、随時フレッシュ性状を確認することができ、全量の管理が可能となる。これにより、待機中に生コンの疑結が進む“ランプロス”が把握できるため、打込み中の不具合を未然に防ぐことができる。
適用工事の上部躯体工事全体にシステムを用いることで、運搬時間や気象条件などに大きく左右されやすい生コンのフレッシュ性状を出荷から荷卸し完了まで随時確認できる。さらに取得したデータは、出荷工場へフィードバックすることで、安定したフレッシュ性状の生産をもたらし、結果として施工現場での高品質な躯体の構築につながる。
今回適用した工事では、RI法(中性子線、γ線の透過量を測定)による連続単位水量測定も実施しており、プローブシステムと併用することでより品質の高い躯体工事を可能にした。
鴻池組では、より高品質な躯体構築に向け、今後も生コン測定システムを積極的に適用していく。プローブシステムは現在、次世代型モデルへと改良を進めている最中で、将来的にはGPS車両管理システムと統合して、生コンの品質管理情報をリアルタイムに取得できるようにバージョンアップさせるという。
次世代型プローブシステムは、2016年7月に経済産業省主催の「第2回先進的IoT Lab Selection」においてファイナリストに選出され、IPA(情報処理推進機構)による先進的IoTプロジェクト支援事業に採択されている。
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