PC製道路橋の残存緊張力を無傷で繰り返し測れる新手法、飛島建設ら:インフラ点検
飛島建設は、東京理科大学や高速道路総合技術研究所、東電設計と共同で、「表面ひずみ法によるPC鋼材残存緊張の推定手法」を開発した。新手法は、PC製道路橋を傷つけることなく、特定の部分に対し繰り返して圧縮応力を推量可能で、PC鋼材の引っ張り力が低下する状態を調べて、経年劣化も確かめられる。
飛島建設は、東京理科大学や高速道路総合技術研究所、東電設計と共同で、「表面ひずみ法によるPC鋼材残存緊張の推定手法」を開発し、2021年1月20日に発売したことを同日に発表した。
計測はひずみゲージなどの安価な計測器と長期耐久性の光ファイバーに対応
長さが15メートル以上のコンクリート道路橋は、国内に約15万橋あり、うち4割に当たる約6万橋がプレストレストコンクリート(PC)で作られている。
PCを用いた道路橋では、コンクリートのひび割れ発生を防ぐために、主桁(しゅげた)の橋軸(きょうじく)方向にあらかじめ圧縮応力をかける。その方法としては、引っ張った状態の鋼材(PC鋼材)を主桁に沿って埋め込み、主桁の両端で固定する「ポストテンション方式」が多く現場で採用されている。
ポストテンション方式を使用した道路橋では近年、ひび割れの発生が多数発見されており、メンテナンスでPC鋼材の緊張力がどれだけ残っているかを正確に測定することが求められている。しかし、従来ではコンクリート内部に切り込みなどを入れる破壊検査と微破壊検査が代表的な方法とされてきたが、両方法は切り込みが圧縮応力を拡散させる要因になるとともに、同じ箇所で繰り返して調べることが困難という問題があった。そこで、飛島建設らは表面ひずみ法によるPC鋼材残存緊張の推定手法を開発した。
今回の手法は、主桁の橋軸直角方向で生じたひび割れを利用し、コンクリートに圧縮応力を発生させているPC鋼材の引っ張り力を推測する。具体的には、普段比較的軽い自動車が走行している状態では閉じている道路のひび割れが、ダンプカーなど重い自動車が走る時に、残っている圧縮応力よりも大きくなった引っ張り応力によって開く動きを測定して、PC鋼材の引っ張り力を推察する。
新手法のメリットは、PC製道路橋を傷つけることなく、特定のエリアに対し繰り返して圧縮応力を推量可能な点と、PC鋼材の引っ張り力が低下する状態を調べて、経年劣化も確かめられる点。また、計測にひずみゲージやπ型変位計といった安価な計測器と長期耐久性の光ファイバーを使え、低コスト化を実現する。
新手法の開発に当たって、東京理科大学や飛島建設などは、約6分の1スケールの試験体を用いた実験と実際の橋主桁を模擬した試験体を活用した実験を実施し、PC鋼材で発生する緊張力を誤差2%以下で新手法により推定できることを明らかにした。
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