鹿島らが屋内の現場などでロボットの自律移動を実現するシステムを開発:ロボット
鹿島建設とPreferred Networksは、屋内の建築現場など変化の激しい非GNSS環境で、自己位置の正確な推定を実現し、ロボットの自律移動を可能とするシステム「iNoh」を共同開発した。
鹿島建設とPreferred Networks(PFN)は、建築現場で使用するロボットが現場内を自律移動するためのシステム「iNoh(アイノー)」を共同開発したことを2021年3月4日に発表した。
建築現場用のAI清掃ロボット「raccoon」に初実装
建築現場は、工事の進捗に応じて作業場所や周辺状況が変化する他、屋内での作業が多く、GNSSにより人やモノの位置計測が難しい。そのため、現場内でロボットを自律移動させるには、さまざまな状況下でも開口部、資機材、高所作業車などの移動物や障害物、立入禁止エリア、作業員を安全かつ確実に避けられるようにしなければならない。
上記の課題を解消するために、鹿島建設とPFNは、共同研究を2018年に開始した。その後、現場の画像、3Dデータ、図面情報の収集および深層学習、コストを含めた実用的なセンサー構成の検討、現場での試行実験を積み重ね、iNohの開発に至った。
iNohは、魚眼カメラやLiDAR(レーザー照射による測距装置)、IMU(慣性計測装置)など、複数のセンサーを高度に統合することで、変化の激しい非GNSS環境でも自己位置の正確な推定ができ、得られたデータから3次元空間をマッピングする。
また、深層学習技術を用いて現場の膨大な画像データを学習することで、障害物や高所作業車などの移動物、立入禁止エリア、作業員などを正しく認識可能。加えて、ロボットが自己位置や周辺環境を把握し、障害物を回避した作業ルートをリアルタイムに自動生成するため、作業範囲を限定するマーカー類の設置など、人による事前設定が不要で、現場納入後、即座に使える。
鹿島建設とPFNは、既にiNohを初実装した建築現場用のAI清掃ロボット「raccoon」を共同開発している。raccoonは、本体の操作画面から最短3タッチの指示で、コンクリート床面にあるごみやホコリを自律移動しながら清掃する。
搭載されたモードは「おまかせ清掃モード」と「領域清掃モード」の2種類。おまかせ清掃モードは、現場内の地図や作業員の指示がなくても、自ら担当するエリアを探索しつつ自律清掃し、領域清掃モードは、掃除するエリアの地図を自動作成後、連携する施工図面上から清掃領域の指定が行える。
両社は、raccoonを首都圏の複数現場に試験導入した結果、100分の連続稼働で約500平方メートルのエリアを掃除することを確認し実用性があると判断した。今後、raccoonを鹿島の建築現場に順次展開していく。併せて、iNohを巡回ロボットや資材搬送ロボットなどに搭載し、建築現場へのロボット普及を促進する。
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