東急建設らが建設廃棄物を自動で選別するロボットを開発、既存施設にも導入可能:ロボット
東急建設と石坂産業は、建設副産物の中間処理プラントで、建設廃棄物の自動選別を行う「廃棄物選別ロボット」を共同開発した。廃棄物選別ロボットは、既存の中間処理プラントの手選別ラインにも設置でき、現在は石坂産業のプラントで試験導入している。今後、実際のラインで得られたデータをもとに改良を重ね、2021年春には廃棄物選別ロボット2台の体制で実用化を目指す。
東急建設と石坂産業は、建設副産物の中間処理プラントで、建設廃棄物の自動選別を行う「廃棄物選別ロボット」を共同開発したことを2021年1月7日に発表した。
搬送速度毎分40メートルまでのベルトコンベヤー速度に対応
建設業界では、2000年に制定された「建設工事にかかわる資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)」に従い、工事現場などで発生した廃棄物を分別し、処分している。しかし、分別が困難な混合廃棄物については、中間処理プラントに運搬され、分別分級処理を経て廃棄物の適正処理と資源化が行われている。
中間処理プラントでは、ベルトコンベヤーを流れる建設混合廃棄物を人の手によって粗選別することが常態化しており、粉じんが舞う環境下で、長時間にわたり廃棄物を注視する作業は過酷で、作業環境の改善と就労者不足は中間処理事業者にとって悩みの種となっている。就労者不足は、建設副産物の再資源化を停滞させ、廃棄物処理費の高騰につながり、処理事業者にとっても将来的なネックとなることが見込まれている。
上記の問題を解決することを目的に、東急建設と石坂産業は廃棄物選別ロボットを開発した。廃棄物選別ロボットは、ベルトコンベヤー上を連続搬送される建設混合廃棄物をカメラで撮影し、取得したカラー画像と距離画像から、深層学習(ディープラーニング)による解析技術で廃棄物の種類と位置を特定して、対象物のみをロボットアームでピッキングし、指定のボックスに運ぶ。
重なり合った(複層)状態や最上層の廃棄物を識別するため、廃棄物同士に隙間(すきま)を設けて、並べなくても選別が可能。また、廃棄物選別ロボットは、既存の搬送ラインに取り付けられ、搬送速度毎分40メートルまでのベルトコンベヤー速度に対応するため、ロボット導入による処理の能力低下を抑え、他の処理工程に影響を与えることも無い。
両社は今後、石坂産業の全天候型独立総合プラント内にある選別ラインで、廃棄物選別ロボットによって建設混合廃棄物から木材だけを選別し、選別精度や耐久性についての検証を行う。2020年度内には、廃棄物選別ロボット2台体制で1時間当たりピッキング数2500個の処理スピードを実現することを目標に掲げている他、ディープラーニング用の追加学習機能を用いて、日々変化する廃棄物に応じられるように高度化を目指す。
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