鉄筋結束の相棒ロボット「トモロボ」、土木・インフラ工事の“太径”に対応:ロボット
建ロボテックは、鉄筋結束を自動で行うロボット「トモロボ」を富士ピー・エスとの提携に基づき改良を加え、土木・インフラの鉄筋工事に対応させた。
建ロボテックと富士ピー・エスは2021年1月26日、鉄筋結束ロボット「トモロボ」がこれまで対応できなかった土木・インフラ工事向けの太径に対応する改造を施し、両社共同での実証実験で有効性を確認したことを発表した。
トモロボ改良で太径φ19〜29ミリへ対応
建ロボテックが販売する結束電動工具を取り付けるだけで鉄筋結束を自動化する「トモロボ」は、建築工事で主となる細径の鉄筋結束作業を専門に行う自走型ロボット。
人とともに働くをコンセプトに、土間・スラブなどの単純な結束作業から職人を解放し、より高度な作業への注力を可能にする「職人力発揮ツール」として開発。本体の左右に、市販されている鉄筋結束用の手持ち電動工具(マックス製の鉄筋結束機RB-440T)を2台取り付けるだけで、作業者の負担となっている鉄筋結束が自動化する。
作業速度は、200ミリピッチで1カ所あたり2.7秒以下。鉄筋の交点を感知しながら結束作業を進めるため、配筋ピッチ(100、150、200、250、300ミリ)の変化にも自動で応じる。対象とする鉄筋径はφ10、φ13、φ16で、±20ミリで、高さのずれや傾きにも追従する。
本体備え付けのコントローラーは、シンプルな構造で、全結束・チドリ結束・2つ飛び結束をスイッチ一つで選択。走行モードは片道と往復の2種類があり、稼働時間は12時間。本体サイズは、可変式で630〜930(幅)×600(高さ)×690(奥行き)ミリ。
今回、富士ピー・エスの全面協力によって、既存機を土木工事やインフラ工事に使用する太径(φ19〜29ミリ)へ対応させるために改造し、2021年1月21日に富士ピー・エスが提供する現場での実証実験で実用性と有効性を確認した。今後は、実験を踏まえたカスタマイズを施し、同社施工の工事に適用する。
トモロボの改良により、これまで対応していなかった土木・インフラ工事(D16/D19以上)の鉄筋工事で利用可能となった。建ロボテックでは、より多くの工事でロボットを活用したスマート施工を実現することで、生産性向上と品質の安定化に加え、作業従事者の高齢化や人材不足といった社会問題の解決につなげるとしている。
建ロボテック 代表取締役 眞部達也氏は、「土木・インフラ工事への対応は、対象工事が公共事業のために現場調査や実験を行うことが困難な領域だった。このたび、富士ピー・エスの協力を得て、現場に即したロボットとすることができたことをうれしく思う。今後、適用範囲を広げ、トモロボシリーズが労働力不足といった社会問題を解決し、現場で働く全ての人達の真の相棒となることを目指していく」とコメント。
また、富士ピー・エス 代表取締役社長 堤忠彦氏は、トモロボ改良の意義について、「土工事を中心にIT施工が普及していくなかで、PC橋工事の施工合理化は大きな課題となっていた。建ロボテックの高い技術力で、施工現場への鉄筋結束ロボットの本格的な導入に向けた実装実験が成功裏に実施されたことは、本格的なIT活用に大きな道筋を付けていただいたと感じている。人とロボットが協力し合いながら、パートナーとして働く姿が、これからの現場のスタンダードになっていくことが期待される」と話す。
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